2021 Fiscal Year Research-status Report
Network Theory from Endo-perspective
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18K03423
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
春名 太一 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (20518659)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ネットワーク / べき乗則 / 圏論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、(a)ネットワーク上のダイナミクスと情報流、および(b)圏論的ネットワーク理論の内在的展開、という二つの課題が設定されている。
(a)について、入力のあるネットワーク上と情報流の関係に関する理論研究に取り組みつつある、と前年度の「今後の研究の推進方策」において述べた。この研究に取り組む中で、最も単純な要素数1の場合(ネットワーク構造なし)について、雑音誘起秩序や雑音誘起カオスが生起するような系においては、これらのメカニズムには依存しないようなべき乗則を伴う間欠的ダイナミクスを抽出できることに気づき、これが乗法的確率過程の観点から説明できることを示した(学会発表2、雑誌論文1)。また別の派生的結果として、ネットワーク上のダイナミクスが生み出す多変数時系列に対して、順序パターンに基づいて単体的複体を構成してパーシステントホモロジーを計算し、時系列間結合の複雑性の指標を得ることができることを発見した(学会発表3)。
(b)について、前年度に発見していた、「ランダムKan拡張」に基づいて導入した新規タイプ出現に関するポリヤの壺的モデルについて、そのダイナミクスに関する3つのべき乗則(Zipfの法則、Heapsの法則、Taylorの法則)に関する理論研究を行った。具体的には、タイプの個数の確率分布の時間発展を近似的に記述するFokker-Planck方程式を導出し、その漸近展開に基づく計算を行うことでこれらの3つのべき乗則を導出した(学会発表1)。また、このモデルにおいて新しいタイプが生ずる段階に関してLawvere量化子を用いた簡単な分析も行った(学会発表4)。さらに、「ランダムKan拡張」の背後にある、Kan拡張を選択の構造として解釈するという考え方を、ネットワークの数理モデルにおける選択過程において例示しながらまとめる作業を行った(雑誌論文2)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の研究を発展させたり、当初とは想定外の方向へと発展させた成果を得ているが、成果発表、特に査読付き論文としての成果発表にやや遅れが生じている。とはいえ、「内在的展開」に関する研究そのものは滞ることなく進めることができていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、次年度が最終年度となる。これまでに当初の研究計画に沿った成果も得ているものの、年度が進むにつれて全体として様々な方向に派生し発散する傾向が大きくなってきており、また「進捗状況」に述べたとおり、研究の進捗と成果発表の速度に乖離が生じつつある。そこで、最終年度である次年度においては、これまでの成果をまとめて査読付き論文として発表することに重点をおいて研究課題を推進したい。
その一方で、未解決の課題も複数ある。まず、(a)において前年度からの展開として当初目論んでいた、入力のあるネットワークダイナミクス、特に線形なESNにおいて次元削減の形で正則化を取り入れると雑音により記憶容量が増加する現象(雑音誘起記憶現象)の解明については、記憶容量に寄与する記憶構造を解析する手法を開発しつつある(未発表)。今後は、まずは平均場理論が適用可能なランダム直交ネットワークにおいて理論計算を行い、雑音誘起記憶現象に理論的にアプローチする。次に、多変数時系列の順序的パーシステントホモロジーについても、まだ適用事例が少ないこと、および解明すべき理論的性質が多く残っていること、などの課題があり、今後取り組んでいく。
また、これまでと同様に、設定した課題に取り組む過程で「内在的展開」に有効と考えられる派生的な課題を発見し優先的に解決することが重要であると考えられる場合には、そのような派生的課題にも取り組む。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響によりオンライン開催になった学会があったこと、また当初現地での参加を予定していた国際会議がオンライン参加可能となり、国内の感染者数が多い時期であったためにオンライン参加へと変更したこと、により旅費の使用が無くなり、残額が発生することとなった。「今後の研究の推進方策」に述べたとおり、次年度は研究成果の発表に力を入れることとし、残額は学会参加の旅費や論文出版のためのAPCを中心に使用する。
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Research Products
(6 results)