2020 Fiscal Year Research-status Report
A numerical study for complex blow-up solutions of nonlinear evolution equations
Project/Area Number |
18K03427
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
牛島 健夫 東京理科大学, 理工学部数学科, 准教授 (30339113)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 解の爆発 / 曲率流 / 数値計算 / リスケーリング・アルゴリズム / 爆発レート / 非線形方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
非線形発展方程式の解は必ずしも時間大域的には存在せず,しばしば有限時間で特異性を生じる.このような現象を解の爆発,特異性の生じる時刻を爆発時刻と 呼んでいる.また,特異性の発生に伴って解のなんらかのノルムが無限大に発散するが,その発散のオーダーは爆発レートと呼ばれている.様々な方程式に現れ る爆発解に対して多様な解析が行われているが,それらの中に複雑な爆発レートを持つ解の存在が指摘されているものがしばしば見受けられる.このような複雑 な爆発レートを持つ爆発解を,統一的に数値計算によって捕まえることはかなりの困難を伴った問題である. 我々は2017年にスケール変換不変性をもつ非線形 発展方程式に対して,リスケーリング・アルゴリズムを利用して,爆発解の爆発レートを見積もる方法を提案した.本研究の第一の目的は,この提案手法の精密 化と適用範囲の拡大であり,第二の目的は,解析的にはその爆発レートが知られていない未知の問題への提案手法の適用とそれに基づいた数学解析である. 2020年度には,2019年度に引き続き,曲線の法線方向速度が曲率のべき乗に比例するタイプの曲率流(この問題はある準線形放物型方程式によって記述される)の爆発解に対する解析的議論を推し進めた.この問題の爆発解の解析において極めて重要になる特殊解(slowly traveling waveと呼ばれている)の漸近挙動について明らかにした.この結果を国内外での(オンラインによる)会議で発表するとともに,現在投稿準備中である.また,関連するある非線形偏微分方程式系のtraveling wave に関する研究成果が出版された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず第一に,コロナ禍の影響で,発表等の計画に大幅な修正が必要であったため,昨年度は必ずしも計画通りの研究遂行が行えなかったため.このため,研究期間の延長申請を行い承認された. 次に,本研究課題申請時の計画では,上記爆発レートに対する提案手法について,以下のことを行うことになっている.1. 提案方法の改良・精密化(数値計算から上記 数列の挙動の情報を引き出す方法の研究.精度保証付き数値計算の利用の検討.リスケーリング・アルゴリズムに含まれるパラメータの利用方法の確立.) 2. 提案方法の適用範囲の拡大(藤田タイプの半線形放物型偏微分方程式,Keller-Segel方程式等への適用の検討.爆発集合の境界上では解の最大値の爆発レートと は異なるレートで解が爆発する状況の検討.完全にはスケール変換不変性を持たないような方程式に対する提案手法の有効性の検討.) 3. 未知の問題に対する 適用と数学解析(面積保存の曲率流などへの適用と数学解析の検討.) 上記の計画の内,2020年度には以下のことを行った. 法線方向速度が曲率のべき乗にに比例するタイプの曲率流に対する数学解析. 研究計画の内のいくつかの課題に関して着実な成果をあげたものの,特に提案方法の改良・精密化に関して,以前からの懸案となっていた偏微分方程式に対して提案手法の適用の際の困難点:「上記数列の計算時間が膨大になるという問題」「上記数列の項数を増やして正確に求めるためには,偏微分方程 式の近似の精度をあげなければならないという問題」については十分な成果をあげられなかった. 以上のことから,本課題の進捗状況はやや遅れている状況にあると判断 している.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究のテーマとなっている爆発問題については,以前より,早稲田高等学院の穴田浩一氏・芝浦工業大学の石渡哲哉氏と定期的に議論を行いながら研究を推進 してきた.今年度も引き続き一ヶ月に一度程度の頻度で両氏との研究打ち合わせを行いながら研究を進める. 申請時の計画では,昨年度が本研究課題の最終年度であったが,新型コロナ禍の影響により,参加予定であった国際学会への参加が不可能になるなど,当初の研究計画通りに研究を遂行することができなかった.このため研究期間の延長申請を行い,承認された. これを受けて本年度は,申請課題中の残りの部分(提案手法の改良と精密化に関する幾つかの課題についての検討)と昨年度に引き続き曲率流に関連する偏微分方程式の爆発解の数学解析について研究を行う.本年度もなお新型コロナ禍による影響は少なくなく,国際学会等への参加は不可能であると見込まれる一方でオンラインでの会議や議論の重要性がますます高まると考えられる.このことから,申請時には旅費として計画していた研究費によって,高速の計算機を購入し,研究課題の推進に当てるとともに,オンラインでの会議のための機器としても利用する.
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Causes of Carryover |
新型コロナ禍の影響を受けて,参加予定の国際会議に参加できなくなる等,大幅な計画変更を余儀なくされた.このため,全ての研究費を次年度使用することが最善であると判断し,研究期間の延長申請を行い承認された. 研究計画申請当初の予定では,国際会議等に参加し,情報収集と成果発表を行う計画であった.しかしながら,今年度も引き続きコロナ禍の影響が大きく,国際会議等への出席は現実的ではない.一方,本研究課題にあっては,高速計算機の利用が極めて重要であるが,本課題スタート時に購入した計算機はすでに陳腐化しつつある.このため,旅費として計上していた研究費によって高速計算機を購入し,研究推進に拍車をかける予定である.
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