2018 Fiscal Year Research-status Report
斜面の状態効果がもたらす懸濁液ダイナミクスの数学解析
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18K03437
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
友枝 恭子 摂南大学, 理工学部, 講師 (90611898)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松江 要 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 助教 (70610046)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 斜面の状態効果 / 懸濁液 / 保存則系 / 衝撃波・希薄波 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.Zhou等(2005),Murisic等(2010),Wang等(2014)の論文を読み,平滑な斜面を流下する懸濁液(ガラスビーズとシリコンオイルの混合液)の実験に関する情報を収集した.先行研究の情報を基にして,実験装置の材料(アクリル板)と懸濁液の材料(シリコンオイルとガラスビーズ)その他の消耗品を購入した.実験装置の作成については,摂南大学テクノセンターに依頼した.実験において,まず先行研究で行われた平滑な斜面に対する実験を再現し,先行結果で示されたパターン(settled,well-mixed,ridged)を確認した.次に斜面が凹凸である場合の実験を行い,平滑な場合の実験結果と比較した. 2.1.で確認した懸濁液の挙動から,先行研究で提唱された数理モデルの見直しを行った.先行研究で提唱されている基礎方程式系は2次元であり,奥行方向について考慮されていない.一方で,斜面が平滑な場合・凹凸な場合 双方とも流体の先端付近に生じる現象は3次元的であり,特にridgedにおいて生じる隆起現象を考察する場合,奥行方向の情報は不可欠である.そこで,まずは奥行方向を取り入れた基礎方程式系を導出した.更に基礎方程式系から粒子輸送モデルを導出したが,導出法についてはCook等(2007),Murisic等(2013)を参考にした.settledについては粒子輸送モデルを縮約させた希釈近似方程式で対応できるので,希釈近似方程式も導出した. 3.先行研究では粒子輸送モデルは1次元の保存則系であったが, 我々が導出した粒子輸送モデルや希釈近似方程式は2次元の保存則系である.そこで既存の手法を2次元保存則系にも適応できるよう参考文献により情報収集した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画通り,平滑な斜面を流下する懸濁液の実験の再現を行い,先行研究で示されたパターン(settled,well-mixed,ridged)を確認した.同様の手法を用いて,斜面の凹凸がある場合の懸濁液表面に生じるパターンを調べた.傾斜方向に沿った波状の斜面において,流体先端部分に生じた隆起現象(ridged)は,斜面が平滑な場合のときほど明確に現れなかった.また波状斜面の凹部分に沿って,settledの挙動が現れた.このような平滑斜面の場合においては確認されなかった挙動を観測できたことは非常に大きい. 次に適切な数理モデル提唱について,上述のように懸濁液に現れる現象は(先行研究の実験結果も含めて)空間3次元的であるが,先行研究で扱われている基礎方程式系は空間2次元の場合である.我々が導出した粒子輸送モデルと希釈近似方程式は,空間3次元に対応した基礎方程式系から導出されており,実験結果で観測された空間3次元的な振舞いをする懸濁液の挙動に適した数理モデルあるといえる. また松江要助教(九州大学)との研究連絡により,提唱した数理モデルの数学解析および数値計算に向けた研究の方向性を定めることが出来た. 以上より今年度はほぼ実施計画通りに進めることが出来た.
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Strategy for Future Research Activity |
提唱した数理モデルに対する弱解の存在検証および弱解を構成する(衝撃波や希薄波など)単純波解のパターンを調べる.今年度提唱した数理モデルは,空間2次元の保存則系であるため,弱解を構成する単純波のパターンを調べるためには,2次元リーマン問題に関する知識が必要である.そこで関連する参考文献から情報収集を行い,提唱した数理モデルに適用する数学解析の手法を構築する.また方程式が複雑であるため,数値計算援用による検証は不可欠である.そこで数値計算法の構築も併せて行う予定である.
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Causes of Carryover |
予想より安くパソコンを購入できたため,次年度使用額が5万円ほど生じた.次年度について,海外出張をすでに2回予定しており,国内出張も複数回予定している.これらの出張旅費で,次年度使用額と請求分を全て使い切る予定である.
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