2019 Fiscal Year Research-status Report
斜面の状態効果がもたらす懸濁液ダイナミクスの数学解析
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18K03437
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
友枝 恭子 摂南大学, 理工学部, 准教授 (90611898)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松江 要 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 助教 (70610046)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 保存則系 / 衝撃波・希薄波 / 懸濁液 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の成果を基に以下の考察を行った。(1)昨年度提唱した数理モデルは、(先行研究で提唱されている)平滑斜面における懸濁液(ガラスビーズ・シリコンオイルの混合液)の運動を記述した基礎方程式系に斜面の状況効果を取り入れたものである。斜面が平滑な場合の基礎方程式系に対する数学解析では、流体の流れは傾斜一方向に制限されており、扱う縮約方程式は空間1次元(斜面)における保存則系である。一方、斜面の状態効果を考慮した場合、斜面の状況に応じて傾斜・奥行二方向の流れを考えなければならないため、我々が提唱した数理モデルは空間2次元(斜面・奥行)における保存則系である。先行研究で扱われている解析手法は空間1次元の保存則系に対してであり、空間2次元の保存則系に対応する解析手法の構築が必要であったため、関連する文献を基に手法の構築を目指した。(2)先行研究では懸濁液の運動を表す基礎方程式系は非圧縮性流体で定式化されている一方、懸濁液の先端付近に生じる隆起現象は2つの衝撃波によるものであるとされている。衝撃波は圧縮性流体で見られる現象であることと昨年度の再現実験から、先端付近の隆起現象は表面張力による可能性も考えられる。そこで基礎方程式系から縮約方程式を導出する際、先行研究では十分小さいとされていた表面張力係数の項を残すことで表面張力係数が大きい場合にも対応できるような縮約方程式の再定式化を行った。(3)円柱状の障害物を持つ斜面の場合、障害物付近でのガラスビーズ単体の動きを表す基礎方程式系は、shallow water 方程式に基づいたモデルであることが分かっている。そこで先行研究の証明方針に従い、障害物付近で生じる衝撃波面の存在について証明方針を立てた。 昨年度得られた結果と今年度の進捗状況について海外の研究集会と国内の研究集会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、基礎方程式系から導出した縮約方程式は、空間2次元の保存則系であり、さらに斜面の状態変化を境界条件に課した場合の縮約方程式は 非斉次項をもつ準線形双曲型方程式系である。これらの方程式系に対する衝撃波計算においては、空間1次元の保存則系で用いた手法の高次元化やiteration法、Glimm差分法を用いた新たな手法の構築が必要である。新たな手法の構築に際し、関連文献からの情報収集に多くの時間をかけてしまったが、衝撃波面の存在証明について、その方向性を決定づけることが出来たので順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
障害物付近で生じる衝撃波面の存在については現在証明法を構築中である。この手法は空間2次元の保存則系に対する解析手法であるため、研究概要の(1)で述べた斜面の状況を考慮した懸濁液の数理モデルに対しても有効である。ガラスビーズ単体の動きについて底部との摩擦も考慮した場合、定式化された縮約方程式は非斉次項をもつ準線形双曲型方程式になる。この方程式における衝撃波面の存在証明については、空間2次元の保存則系に対する結果を踏まえて行う。また衝撃波面の存在証明においてGlimm差分法やiteration法も必要となるが、これらの数値解析的手法による証明は、研究分担者との研究打ち合わせにより構築する予定である。
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Causes of Carryover |
3月に研究分担者と研究打ち合わせを九州大学で行い、当該年度の研究費を使い切る予定であった。しかし、新コロナウィルス感染症(COVID-19)拡大の影響により、研究打ち合わせを中止にしたため、次年度に繰り越し分が生じた。次年度は、9月にAlgoritmy(スロバキア)に参加し、研究成果を発表予定である。またANZIAM2021(オーストラリアorニュージーランド)にも参加予定である。新コロナウィルス感染症の影響が生じなければ、先述の海外出張と国内出張の旅費として使い切る予定である。
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