2018 Fiscal Year Research-status Report
多自由度の協力現象として現れる量子効果とダイナミクスの研究
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18K03444
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮下 精二 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10143372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 貴司 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 客員共同研究員 (00647761)
西野 正理 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, 主幹研究員 (80391217)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 量子スピン系 / 不純物誘起磁化 / 行列積波動関数 / 光相安定性 / 量子マスター方程式 / キャビティQED |
Outline of Annual Research Achievements |
多自由度の協力現象、特に、メゾスコピックな空間スケールにおいて、多数のスピンやフォトンなどの量子離散自由度が、織りなす集団運動での量子効果の特徴について研究 に関して2018年度は以下の研究を行った。 反強磁性体において不均一性から誘起される局在磁化に関しては、エネルギーギャップがあるスピン系(gapped spin系)において不純物によって誘起される実効的なスピン状態を行列積波動関数(MPS)を用いてあらわすことを定式化し、その特徴を明らかにした。波動関数が厳密に知られている典型的なgapped spin系であるAKLT模型において系の端ではなく中間に実効スピンが誘起されている状態の厳密なMPSを求め、その状態の外部磁場への応答の特徴を明らかにし、複数個の誘起スピンを独立に操作する方法について調べた。 また、一般のgapped spin系としてボンド交替反強磁性ハイゼンベルク模型鎖の近似的なMPS状態を具体的に構成し、そこでの交替欠陥における実効スピンの誘起状態を表すコンパクトなMPSを具体的に求め、誘起スピン間の相互作用などを明らかにした。 また、光子自由度によって結合したキャビティ内スピン集団が光照射など周期外場駆動下でみせる光相安定性などの動的相転移における量子効果、磁化反転過程に現れる巨視的準安定性の崩壊過程の量子効果に関して、高度な数値解析法を開発した。それを用いて双安定性をこの系の秩序変数である光子数あるいは磁化の分布関数に関する1次相転移の観点から解析し、特にキャビティ系が格子の量子性が重要となるいわゆる強結合状態での光相安定性の特徴を特に、散逸を含めた量子ダイナミクスを表すが量子マスター方程式の時間発展演算子の固有値問題として明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
gapped spin系での誘起スピンを記述する具体的な行列積波動関数の定式化を厳密に解ける系であるAKLT模型と、実際のボンド交替反強磁性ハイゼンベルク模型鎖でも同様な波動関数の構成ができることを具体的に示し、誘起スピン間の相互作用について定量的な評価法を開発できたことは重要な成果と考える。 光相安定性のミクロな表式から具体的な現象のシミュレーションを行える一般的な数値解析アルゴリズムを完成し。これまで世界的にも実現されていない大きな系での量子散逸現象のデータを得ることができ、それから無限系でに1次相転移が有限サイズからいかにして起こるかを初めて明らかにできたことは重要な成果と考える。 この研究において、光双安定状態での不連続な状態変化は熱力学の1次相転移相転移の場合とは異なり、ダイナミクスから求めた自由エネルギーに対してはマクスウエルの面積則規則のような方法が使えず、サイズ依存性から求めなくてはならないことがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
不純物誘起実効スピンの相互作用に関して、より詳しい解析を行い、誘起されたスピンがどの精度で独立に操作できるか、また外部磁場への依存性がどのような形のなるか、さらには実験的に観測されている特徴あるESRスペクトルが波動関数のどのような特徴に依るのかなどについて研究を進める。また、スピン状態のエンタングルメントのための相互作用と独立操作のための非エンタングルメント性の関係についても研究を進める。また、動的な外場での駆動に関してギャップの上の励起状態がどのように混入してくるかについても調べる。 キャビティ内スピン集団量子運動に関しては、双安定状態の間の遷移の困難さからくる履歴現象を明らかにしたが、さらに駆動外場の強度が周期的に変動する場合の周期的に変動する定常状態をあたわす状態をフロケ演算子の方法で明らかにしていく。そのため、散逸量子系でのフロケ演算子の固有値問題に関する研究を進めていく。 このような量子系での一次相転移に関する現象を一軸的な異方性を持つ磁性体の準安定性が崩壊するStoner-Wohlfarth(SW)現象などでも調べて行く。とくに、多数のスピンが短距離相互作用で結合した系での核形成過程などにおける量子効果を明らかにし、磁気記録媒体の微小化に伴う量子効果を明らかにする。より一般に、マクロな現象における特異性(カタストロフィ)のメゾスコピック系での量子力学的機構は興味深いものであり、たとえば、3重臨界点での量子効果などにおける共通の特徴を逐次的ランダウ・ゼナー遷移構造をもつ準位レベルの観点から明らかにする。
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Causes of Carryover |
招待を考えていた外国人研究者の訪問が、来年度に延期になり、そのため考えていた古知多からの訪問も延期になったため。これらを2019年度に行い、それに加えて2019年度は計画通り予算を執行する。
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Research Products
(6 results)