2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K03448
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 純 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (10735723)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 非平衡統計力学 / 量子可積分系 / 相関関数 / ダイナミクス / ベーテ仮説 |
Outline of Annual Research Achievements |
統計力学の基礎付けの観点から,孤立量子系の平衡化の問題が近年盛んに研究されている.ところが,相互作用する量子多体系において,物理量の時間発展を精度よく計算することは困難を極める. そこで,量子可積分系として知られるスピン-1/2ハイゼンベルクXXZ模型を用いて,その厳密なダイナミクスを解析した.本研究では,開放端で質量ギャップのあるXXZ模型に注目し,その端スピンの自己相関関数のダイナミクスを調べた. 熱力学極限における時間無限大の緩和値については,先行研究(arXiv:1901.10932)において調べられた.我々が調べたいのは有限時間でのダイナミクスなので,それを得るための準備として,まずは有限系のベーテ方程式の解の構造について詳細に調べた. 基底状態,および低励起状態におけるストリング解の構造を明らかにし,そのベーテ量子数を明らかにすることに初めて成功した.また,従来はストリング仮説を仮定した議論しかなされていなかったが,実際にはストリング仮説からのずれがある.それは数値的に求めることは非常に繊細で困難な問題とされてきたが,これを厳密に求めることに成功し,対応するベーテ量子数を初めて明らかにした. これらの成果をもとに,形状因子に対する行列式公式を用いて,形状因子展開の方法によって自己相関関数の有限時間ダイナミクスを得ることに成功した.全ての低励起状態を同定し,ずれのない完全ストリングに対する形状因子の行列式公式を導出することによって,熱力学極限におけるダイナミクスを計算することは今後の課題である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開放端スピン-1/2ハイゼンベルクXXZ模型の基底状態,および低励起状態のストリング解の構造を明らかにすることに成功し,これまで困難とされていた孤立量子系の時間発展を厳密に計算することに成功した.また,従来はストリング仮説を仮定した議論しかなされていなかったが,実際にはストリング仮説からのずれがある.それは数値的に求めることは非常に繊細で困難な問題とされてきたが,これを厳密に求めることに成功し,対応するベーテ量子数を初めて明らかにした.
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Strategy for Future Research Activity |
今回,質量ギャップのある開放端XXZハイゼンベルク模型の低励起状態のストリング解の構造およびベーテ量子数を明らかにしたが,まだ抜け落ちている重要な励起状態もある.より厳密にダイナミクスを追うためには,それらを全て同定する必要があり,今後の重要な課題である.また,熱力学極限をとるためには,ずれのない完全ストリングに対する形状因子の行列式公式を導出する必要がある.これは極限操作によって行列式の縮約を行えば得られるはずであり,これも今後の課題である.第一の課題としては,これらの成果を元に熱力学極限,あるいは十分大きな系において,自己相関関数のダイナミクスを明らかにすることである.
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Causes of Carryover |
新しいノートパソコンを買わずに以前から使用していたもので数値計算を行ったため,次年度繰越額が発生した.次年度は計算負荷の必要に応じて計算機を購入し,また前年度同様に旅費が主要出費となり,また学生やポスドクによる専門的知識の提供に対する謝金にも使用する予定である.
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