2019 Fiscal Year Research-status Report
Self-consistent electron-lattice simulation methods for the strongly correlated quantum systems
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18K03456
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
草部 浩一 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (10262164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 邦夫 宇都宮大学, 工学部, 教授 (40417100)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 強相関電子系 / 密度汎関数法 / 銅酸化物 / エキシトン / RPA / 多体摂動論 / GW |
Outline of Annual Research Achievements |
グラファイトの断熱ポテンシャル面(PES)に強相関電子系特有の短距離電子相関効果が現れることを発見した。MR-DFTに基づき、ACFDT-RPA+U法及びLDA+U+RPA法を新規開発して出版公開した。この方法により、精密測定が明らかにした単結晶グラファイトの45GPaを超えるc軸方向弾性定数を再現することに成功した。 電子・格子結合系での超高速波束ダイナミクスと非断熱ダイナミクスのコヒーレント制御法を理論解明した。断熱ポテンシャル面間の交差点近傍では、波束のコヒーレント運動にとってラマン散乱過程が本質的となる。この過程は、フェムト秒スケールでの光励起・光脱励起過程解明に必須の効果である。 磁気抵抗デバイスを与えるNi/hBN/Ni積層薄膜を構造に、BN層の分極反転からスピン流を反転させる交差相関が生じることを発見した。この電場による磁気抵抗制御を、インドネシア大と共同出版した。JAXAの森下氏と共同で、グラフェン原子欠損の電子強相関効果から発生する近藤遮蔽とフェリ磁性の存在を、一群のフェナレニル充填可能分子(PTM)に対して証明した。近藤効果のスペクトル関数特性を、機械学習法により特定するための解析接続計算法を整備した。 グラフェン原子欠損に特有なPESが発現する脱水素触媒作用が、各種アルカン分子からの脱水素反応も引き起こすことを理論的に確認した。この反応でCO2発生を伴わない水素製造プロセスを発明し、法政大学、㈱ダイセルと共同で特許出願した。爆轟反応による炭素系材料(ナノダイヤモンド、ナノグラフェン)の合成を例に、遺伝的アルゴリズムを用いた合成反応過程の高速シミュレーション技術を、NIMS、㈱ダイセルと共同で開発した。 高エネ研との共同研究として、半導体表面でのPEEMスペクトルへの素励起間有効相互作用の理論構築を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年度・令和元年度の目標は、電子系の強相関性を精密評価しながら、その効果が物質構造や弾性特性、電子格子相互作用に、広く影響を及ぼすことを示すことであった。そこで、有効電子間相互作用(U)の評価を基にした断熱ポテンシャル面の精密評価法(LDA+U+RPA法及びACFDT-RPA+U法)を単結晶グラファイトに適用した。ACFDT-RPA法を含む既存方法では現れない非線形性の発生を同定し、実験データとの整合性確認によりこの効果の存在を確定した。大阪大学工学研究科の荻教授・カネカ村上博士らと進めたこのPESの強相関電子効果は、電子・格子間相互作用の高次項を与える。 動的過程で現れる強相関状態特有の効果として、原研で進められているPEEM観測での光電子放出強度に現れる非単調な入射プローブ光エネルギー依存性が、素励起間相互作用効果が現れうることを検討開始している。有効電子間相互作用決定法を用いた素励起間多体効果を実験との直接比較で検証するため、現在、KEKの福本特任准教授との間で、半導体励起状態についての時間分解PEEM測定の解析を進めている。その中には、電子・格子系の協調運動が現れる可能性が高い。 原子層物質での電子相関効果と電子・格子相互作用の研究は、KEKとの共同研究(Bi2Se3)、インドネシア大学Majidi教授との共同研究(Ni/hBN/Graphene/Ni系)、JAXA研究員森下氏(ナノグラフェン系)、などを総合的に議論して進める。機械学習の適用と位置付けられる、実時間スペクトル解析(解析接続、福岡工大)、遺伝的アルゴリズム(化学反応計算加速化法、NIMS、㈱ダイセル)は、共同研究としてさらに研究展開する。
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Strategy for Future Research Activity |
断熱ポテンシャル面(PES)変調効果として、令和元年度に発見したPESに現れる強い非調和項は、電子・電子間相互作用の効果であり、電子・格子相互作用の高次項を与える。この新しい表現形式の電子・格子相互作用の理論を原子層物質等に適用する。原子層物質の交差相関は、PESの多重安定性(電子・格子系の非調和性)を基に電場による磁気抵抗効果(電子相関効果)の制御性向上を示した。この知見をMR-DFTの表現理論に基づいて統合し、強相関電子状態とフォノン間の相互作用を与える方法を確立する。同時に、神経形態学的スピンエレクトロニクスデバイスなど新規現象の発見を目指す。 具体的には、電子・格子相互作用評価を通した素励起間相互作用の評価を進める。特に、n-GaAsのPEEM表面観察実験で発見された電子・正孔間相互作用効果の理論的解明を目指す。MoS2やBi2S3等の原子層物質での電子相関効果をトポロジカル量子効果の視点と組み合わせて論じる。 銅酸化物のオーバードープ域に見られる強磁性的揺らぎと反強磁性相関の拮抗を表現し、電子・フォノン相互作用効果も併せて、磁性揺らぎの実験的検証方法を提言する。 ナノグラフェン等の触媒反応や合成反応を例に、非調和性PESの高い物質構造を探索するツールを開発する。強相関状態とフォノン間相互作用の発生起源となるこの強い非調和性を表現し、ポテンシャル障壁を超える反応ダイナミクス計算を遺伝的アルゴリズムの適用により高速化する。 これらの目標を達成するため、高エネルギー加速器機構、インドネシア大学、法政大学、そして大阪大学内や企業研究者との共同研究を推進して、強相関電子系における電子・格子自由度に関わる自己無撞着構造計算理論を各段に進める。
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Causes of Carryover |
物品費の使用にあたり割引特典を受けたため。翌年度においてデータ保管用補助記憶装置の購入を行う。
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