2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K03468
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
秋元 琢磨 東京理科大学, 理工学部物理学科, 准教授 (30454044)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 確率過程 / レーザー冷却 / 異常拡散 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子の極低温への冷却では、工学的な技術開発だけでなく科学の飛躍的進歩が重要な役割を果たしている。この原子が極低温まで冷却される過程は、原子の運動量が ゼロへ向かっていく、言わば、非定常な過程である。このような非定常な過程のダイナミクスを明らかにすることは、従来の統計物理の枠組みを超えた研究であり、物理の新たな研究分野の開拓に繋がる挑戦的な研究である。本研究では、subrecoil laser cooling と呼ばれる原子の冷却過程を記述する確率モデルを用い、 冷却されている原子のダイナミクスを解明することを目的としている。 2019年度では、subrecoil laser cooling において、運動量の変化が一様分布に従うとしたセミマルコフ課程(SMP)を導入し、そのプロパゲーターを厳密に求めた成果を論文にまとめ、Physical Review E へ投稿し、無事にアクセプトされた。SMPにおいて、プロパゲーターの形式的な定常解は、規格化できないもの(無限測度)になることがわかった。さらに、この無限測度は、緩和過程を特徴づける上で重要な役割を果たしていることを発見した。これらの結果は、subrecoil laser cooling へ簡単に応用することが可能であり、現在、subrecoil laser cooling の確率モデルへ応用した結果を論文にまとめている段階である。SMP は、レーザー冷却以外にも一般化されたレビィウォークの速度やトラップモデルのエネルギーに対応した物理課程であるため、その応用は広範囲である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に続き、セミマルコフ過程の厳密な計算が完成し、当初の予定であったレーザー冷却モデルへの応用をすることにより、本研究の目的である冷却されている原子のダイナミクスの解明、そして、非定常な過程を記述する物理の構築に向けて、一歩前進したため
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Strategy for Future Research Activity |
具体的なレーザー冷却モデルへこれまでの結果を応用し、レーザー冷却における原子のダイナミクスを解明し、その成果を論文にまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ感染拡大のため、海外の共同研究者に訪問して、議論することが困難な状況になったため、次年度の使用が生じた。コロナ感染が落ち着いた時期に研究打ち合わせを行う予定である。
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