2018 Fiscal Year Research-status Report
量子系のエンタングルメントと幾何学に関する情報理論的研究
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18K03474
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Research Institution | Sendai National College of Technology |
Principal Investigator |
松枝 宏明 仙台高等専門学校, 総合工学科, 教授 (20396518)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 量子エンタングルメント / ホログラフィー / 特異値分解 / 情報幾何 / 量子古典変換 / くりこみ群 |
Outline of Annual Research Achievements |
理論物理学の多方面の領域において,「エンタングルメント」「ホログラフィー」は分野を横断した極めて重要な概念として広く認知されている.これらの理解が深まれば,理論物理学の伝統手法ではアプローチしにくい難問の核心に迫ることができる.とりわけ,くりこみ群・重力・量子古典変換などの物理学における重要概念の関わり合いを明らかとすることに大きな興味が持たれている.この目的を実現するために,本研究者は情報の主成分解析手法である特異値分解および情報の幾何学表現である情報幾何の手法を用いて,上記の問いにアプローチすることを独創的な武器として研究を進めている.研究課題全体としては,(1)特異値分解の機能性とホログラフィー原理の研究(2)情報幾何学による量子古典変換理論の構築(3)MERAネットワークのウェーブレット解析の3課題があり,本年度は(1)及び(2)の一部を進展させることを目的としている.今年度は,本研究者の著書に基づいた集中講義を理化学研究所・中央大学・愛媛大学等で行い(全45コマ),上記の目的に関連する多彩な事項に関して,多くの異分野研究者と情報交流を持ったことが一つの成果である.また,ウェーブレット変換と特異値分解の関係,トポロジカル系の特異値解析,一次元自由電子系の情報幾何表現とゲージ重力対応,深層学習とくりこみ群の関わりなど,これまで以上に多彩な専門分野で研究の進展が見られ,それに基づいて研究会やセミナーでの講演を行った.その一方で,業績の論文誌への採録というゴールにはまだ至っておらず,今年準備してきた予備的成果を形にしていくことが今後求められることであると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属の副校長をはじめとした管理業務過多の為,十分な研究時間を確保することが難しかった.研究自体は進展し論文投稿までには至ったものの,最終的に論文誌への採録という完成までもっていくことができなかった.そのため全体評価としてはやや遅れていると判断せざるを得ないと考えている.当初予定としては,平成27年度から平成29年度にかけて実施した科研費基盤C課題「量子・情報物理・幾何の絡み合いの研究:量子古典対応の研究」から引き続いて特異値分解のくりこみ群的機能性を多彩なモデルで明らかにすることが研究の足がかりと考えていた.またこれに関連して,情報物理と人工知能の関わり合いも重要な課題として浮上してきている.解決すべき重要な課題自体とそれらに対する予備的成果は揃っており,ここまでの遅れを取り返す準備は整っている.
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Strategy for Future Research Activity |
具体的には,(1)特異値分解の機能性とホログラフィー原理の研究,(2)情報幾何学による量子古典変換理論の構築,の2課題を中心に進める.(1)については,これまでイジング模型に集中して研究を進めてきているので,物理的な性質の異なる系(例えばトポロジカル系など)の特異値分解にトライしている状況である.予備的な結果が得られつつあるので,これを推進していく.またメラン変換としての連続極限特異値分解の機能性についての研究が重要であり,これは自身の過去の業績に基づいて研究を進展させる.また(2)については,数学者との協力により,一次元自由電子系の量子古典変換についてある程度の内容まで研究が固まってきているので,あとは数学的な詳細を詰めていくことが具体的な課題となる.
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Causes of Carryover |
所属における副校長・学科長をはじめとした管理運営業務等の影響で,当初予定していた国内外の出張や会議開催,また最新のワークステーション等の高額の購入物品をスムースに行うことができなかった.これらを今年度は積極的に推進するとともに,現状の問題点を打開するために,持ち越した額を人件費として有効活用できるか検討し,研究から可能であれば事務的な部分まで含めてチームで作業分担できる体制の構築を目指したい.
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Research Products
(5 results)