2018 Fiscal Year Research-status Report
Control and measurement of quantum states with dissipation
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18K03479
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
都倉 康弘 筑波大学, 数理物質系, 教授 (20393788)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 振動電場 / 量子ドット / 電子スピン / 非平衡状態 / 量子マスター方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
散逸を伴う量子状態制御系のモデルとして、振動電場により時間的に変調された電子の軌道が不均一磁場を介して電子スピンのラビ振動を引き起こす系を考える。電子の軌道に散逸がない場合には、高い忠実度でのスピンのコヒーレント制御が可能であり、実際振動電場が小さい条件では実験的にも確認されている。今回、振動電場の振幅が大きくなり、電子軌道が電子・フォノン散乱により散逸する効果を調べた。従来の理論的研究では考慮されてこなかったスピンとフォノンの有効ハミルトニアンにより、スピンのエネルギー緩和レートと、位相緩和レートをそれぞれ与える表式を導き、実験に対応するパラメタでの見積もりを行った。 一方、二重量子ドットに2電子が占有されたいわゆる一重項・三重項量子ビットの状態を量子ポイントコンタクトを用いた電流計で測定し、その結果に応じて量子フィードバックを行う枠組みを確率量子マスター方程式により構築した。先行研究では一電子により構成される電荷量子ビットが対象であったが、本モデルでは制御の自由度がより多くなる。測定結果に応じてフィードバックする制御パラメタとして系の散逸を制御する量を選ぶと理論的枠組みが非物理的な結果を与えることが明らかとなった。そのため、このような量子フィードバックを扱う手法そのものを再検討する必要があると思われる。 非平衡状況下の量子ドット系のダイナミクスのモデルとして、非平衡フォノン場と結合した二重量子ドット系の検討を進めた。極低温ではフォノン放出によるエネルギー緩和のみが起こりこれがエネルギー散逸の起源であるが、非平衡フォノンが存在するとフォノンの吸収と放出を伴う2フォノン過程が顕在化する。その場合は、従来は関与しない第3の量子準位を介した量子遷移過程が支配的となる。このような2フォノン過程を取り扱う量子マスター方程式を導出し、具体的な3準位系に適用し特徴的な時間スケールを求めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二準位系の制御に関してはデコヒーレンスの解析を進めることができたが、それを抑制するデカップリングパルスなどの効果についての解析までは行かなかった。近接二重量子ドットのスピン状態の電荷系による測定モデルについては予定通りの進捗である。また、非平衡状態の量子ドット系に関しても具体的な検討を進めることができ計画通りの進捗である。外部パラメタを時間的に制御する系での過剰エントロピー生成やスピン流生成に関しては、関連研究者との議論を通して新しい「ゲージ」の自由度に関する知見を得て、この概念を元にした検討を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
二準位系の散逸の効果に関しては、少し対象となる系を広げて議論を進める予定である。また、計画にある通りディカップリングパルスなどを用いた散逸の抑制の効果についての検討を進める。量子フィードバックに関しては、H30年度の解析で顕在化した特殊な(散逸量を制御する)フィードバックパラメタでも解析可能な方法を探索する。量子ドット系が非平衡フォノン系と結合した系の検討を開始したが、これを進めて電子系自体が非平衡定常状態となる場合へ展開する。そのような状態の制御、測定の枠組みを明らかにしたい。外部パラメタを時間的に制御した開放系の解析は「ゲージ」の自由度など新しい観点から改めて本質の理解を進める。
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Research Products
(9 results)