2019 Fiscal Year Research-status Report
量子状態の高速高精度制御に向けた量子加速理論とその応用
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18K03486
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
増田 俊平 東京医科歯科大学, 教養部, 特任助教 (90546897)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高速高精度量子制御 / 超伝導デバイス / マイクロ波光子 / Fast-forward theory |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は高速高精度な量子状態の制御を可能にする事を目的とし、様々な系での実装を提案してゆく。超伝導デバイスは量子コンピュータ実現の場になることが期待され盛んに研究をされている。我々は量子計算を行うための初期状態を高速で実現するため超伝導デバイス上の光共振器を高速で冷却する手法を提案した。本研究はAalto大学とのグループとの共同研究で研究結果はApplied Physics Letters 115, 082601 (2019) に発表された。 マイクロ波は超伝導デバイス上でエネルギーや情報を運ぶ重要な役割を担っている。超伝導デバイス上でマイクロ波パルスを高速高精度に発生させる単一光子源を提案した。Shortcuts to addiabaticityを使うことで高い光子生成効率が実現できることを理論的に提案した。結果は国際会議SQ20thにてポスター発表された。 シリコン量子ビットも量子コンピュータの担い手として期待され盛んに研究されている系である。我々によって以前に提案された手法をさらに発展させ、より実験的に実現しやすい高速2量子ビットの制御を理論的に提案した。以前の手法が2つの制御パルスを使うものだったのに対して、新しい手法では一つのパルスで同程度の効率の制御が可能になった。結果はUniverse 6, 2 (2020)において発表された。 備考:光格子に閉じ込められた冷却原子も量子コンピュータへの応用の観点から盛んに研究が行われている。量子コンピュータの実現に向けた研究のためには、決まった初期状態を何度も高速で実現する必要がある。我々はfast-forward scaling theoryを使ってMott絶縁体状態を高速かつ高精度に実現する制御を提案した。結果はSTA2020で発表の予定であったがコロナウイルスの影響で中止となってしまった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の大きな目標の一つである多体系の制御に関して、大きな進展を得ることができた。具体的には、光格子内の冷却原子のMott絶縁体状態を高速でつくる理論の構築に成功した。多体系の記述は一般に非常に難しいがGutzwiller近似で状態を記述することで、fast-forward scaling theoryが使えるようになることをしめした。 量子加速理論を使った高速高精度な量子情報処理(2量子ビットゲート)の提案も本研究の主要なテーマある。上記のように、我々は以前に提案した手法をさらに発展させ、より実験的に実現しやすい高速2量子ビットの制御を理論的に提案した。以前の手法が2つの制御パルスを使うものだったのに対して、新しい手法では一つのパルスで同程度の効率の制御が可能になった。結果をUniverse 6, 2 (2020)で発表することができた。 もう一つの目標として、準位間遷移を含むダイナミクスの加速(STAを超えた理論の形成)がある。私は量子ビット系においてfast-forward scaling theoryを使った制御を研究している。ダイナミクスを遅くするという方法を詳細に調べることで系の深い性質(状態空間での分岐)が発見された。現在、量子アニーリングなどへの応用を期待して研究を進めている。 cQED系での任意波形の単一光子生成については予想していたよりもやや進展が遅れている。これは他の研究との優先順位を考慮した結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように冷却原子(多体系)の制御についてGutzwiller近似で状態を記述することで高速制御の方法を導出することができた。今後近似を使っていない系においての制御の効率を数値的に評価していくことを計画している。実装しやすい制御を提案することを目的とする。
超伝導量子ビット系においては、量子アニーリングや量子ビットの高速制御の研究を進めていく。量子アニーリングの計算制度向上、量子コンピューティングのLevel cloudingの問題解決をめざした研究を進めてゆく。最近、新しく発見した状態空間での分岐の応用を積極的に目指していく。また、制御理論を量子ビットの状態測定などに応用できないかという観点からも研究を進めていきたい。
cQED系での任意波形の単一光子生成については他の研究との優先順位を考慮しながら進めていく。具体的にはfast-forward scaling theoryの標準ダイナミクスを変化させながら結果として出るパルスの最適化を行う。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響で予定していたアメリカとフランスでの国際会議が中止になってしまい、予定していたよりも使用額が少なくなってしまったため。来年度に予定していたよりも多くの国内および国際会議へ参加し、旅費にあてる。
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