2018 Fiscal Year Research-status Report
電場ベクトル制御技術を駆使した超高速スピン輸送制御
Project/Area Number |
18K03487
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
伊藤 宙陛 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任助教 (60724127)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三沢 和彦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80251396)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | フェムト秒レーザー / 位相制御 / 偏光制御 / 半導体 / トポロジカル絶縁体 / スピントロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は光の持つ物理量である(a)偏光方向制御、(b)周波数制御、(c)位相制御、全てを駆使することで、伝導電子の(A)スピン、(B)電子速度、(C)局所電子濃度に直結させ、究極的な光-キャリア制御を目指す試みである。本研究で開発中の顕微鏡は直行した2成分のフェムト秒パルスの周波数、位相をそれぞれ独立に操作し光の持つヘリシティを制御することで、物質のヘリシティにアクセスできる特徴を持つ。まず空間位相変調器を用い近赤外域フェムト秒パルスの瞬時偏光方向を制御し、半導体量子井戸内の伝導帯におけるスピン状態の操作を行った。さらに空間位相変調器をマイケルソン干渉計に置き換え、光学系をハイパワー化しテラヘルツ波の電場ベクトルを制御した。さらにトポロジカル絶縁体中の表面スピンバンドの操作を見据え、電場ベクトルの制御されたテラヘルツ波をダブルパルス化しポンププローブ測定が可能な顕微鏡へと拡張した。 Ti:Sapphireレーザー、再生増幅器を経て得られた3 mJ、35 fsの近赤外域フェムト秒パルスを回折格子対で延伸しマイケルソン干渉計に導いた。この干渉計はエンドミラーに接続されたステージにて直行する電場2成分の遅延時間が調整され、λ/4板の通過後、直線偏光の回転周波数、回転方向が制御されたねじれ偏向パルスを生成することができる。この仕組みをさらに発展させ干渉計のエンドミラー手前にペリクルビームスプリッターをそれぞれ配置することで、ポンププローブ測定に必要なダブルねじれパルスを生成した。この設計により、2つのねじれパルスの回転方向、周波数、遅延時間がそれぞれ独立に調整できる。またダブルねじれパルスをGaP[111]結晶の光整流作用によって円偏光テラヘルツ波に変換した。円偏向テラヘルツ波の瞬時電場をEOサンプリング法によって観察し円偏光テラヘルツパルスが生成されていることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ペリクルビームスプリッターによるテラヘルツダブルパルス-ポンププローブ顕微鏡の開発は台湾国立交通大学と連携を取り共同開発しおおむね完了した。本研究室ではマイケルソン干渉計のエンドミラーにアクチュエータを配置したテラヘルツパルスの位相変調技術を開発している。また国立成功大学にてフェルミエネルギーがディラックポイントをまたいで調整可能なトポロジカル絶縁体試料を開発している。これらの開発を同時進行で進めているため本研究はおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究を進めるにあたり、ダブルテラヘルツパルスの相対位相がトポロジカル絶縁体試料のポンププローブ測定に大きく影響を与える可能性が示唆された。検証の結果、相対位相の安定性が重要であり、さらに相対位相を変調することで試料のコヒーレンスな波動関数が観測可能であるとの結論に至った。そこで干渉計のエンドミラーにアクチュエーターを配置し、円偏光ダブルテラヘルツパルスの位相変調を試みる。 本実験に必要なディラックポイント付近でフェルミエネルギーが調整可能なトポロジカル絶縁体試料は台湾国立交通大学、台湾国立成功大学の協力のもと開発することになった。位相変調システムの導入は並行して進め、最終的に開発されたトポロジカル絶縁体試料のスピン状態の操作を実現する予定である。
|
Causes of Carryover |
本実験に必要なテラヘルツパワーメーターや検出結晶の選定に予想以上の時間を要し、納期が次年度に超えてしまう可能性があったため繰り越した。次年度にこれら高額な物品を購入する予定である。
|
Research Products
(3 results)