2018 Fiscal Year Research-status Report
Polarization induced by an electric field perpendicular to the polar axis of the ferroelectrics
Project/Area Number |
18K03490
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
喜久田 寿郎 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 准教授 (20313588)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 強誘電体 / 電場効果 / エレクトレット / 自発分極 / 焦電気 |
Outline of Annual Research Achievements |
強誘電体の分極軸に垂直な方向へ長時間に亘り直流電場を印加すると、自発分極の大きさが次第に減少し、最終的には観測できなくなる現象を発見した。この現象のメカニズムを探る途中で分極軸に垂直な方向にも焦電気のようなものが観測されることを見つけた。本研究は、この起源を探るために、分極軸に垂直な方向の分極の大きさが自発分極の減少と関係しているのかどうかを調べる研究である。 初めに単結晶を育成し、それを成形し電極を取り付けて試料とした。分極軸に垂直な方向(c軸)へ直流電場を印加すると自発分極の大きさが減少することが確認できた。つづいて、c軸への直流電場の印加で流れる電流が時間変化するのかどうかを測定した。印加時間とともに電流が減少する様子が見られた[1]。しかし、これには表面電流なども含まれていたために、試料雰囲気に大ききが左右されるものであった。このため、ノイズ対策をし、ガード電極を採用するなどして測定したところ、電場印加直後は急速に減少するが、その後わずかに増加し始め、自発分極が観測できなくなる程の長時間を経ると、電流はそれ以上増加せず一定になった。印加直後の減少は吸収電流と思われる。その後のゆっくりとした電流の増加は、c軸の電気伝導率がわずかに大きくなっていっていることを表している。以前の研究から長時間の直流電場の印加によりドメインが微細になることが分かっているので、ドメイン壁が増えたために電気伝導率が大きくなったためと考えられる。逆に、この測定からドメインはある時間が経過するとそれ以上は微細化しないことが明らかになった。 現在は、分極軸に垂直な方向の分極の大きさの測定を始めたが、直流電場を印加しなくても、焦電気が観測されてしまっているので、測定方法や電極の構造を検討している。
[1] 奥田、喜久田、2018年度日本物理学会北陸支部定例学術講演会, 金沢大学, Ca7 (2018).
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
計画では、今年度は焦電気法による分極の大きさの測定までを行う予定であったが、その一つ前の段階の微小電流の測定の追試と、今後に向けての試料の電極の形状の検討を行っているところである。 研究が遅れているのは、組織変更に伴い実験室を移動しなければならなかったので、機器のセットアップに非常に時間がかかってしまったためである。また、研究室の汎用の機器ではうまく測定できず、予定していた機器が高額であったので代替機種を探すのにも時間を要した。 長時間に亘る電場の印加で自発分極の大きさが小さくなるという現象の確認は、これまで何度も行ってきたので比較的スムースに行うことができたが、微小電流の測定では、表面電流の除去やノイズ対策に手間取ったことがあげられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは微小電流の測定を終わらせてしまい、焦電気法による分極の大きさの測定を開始する予定である。少し予備実験をしたところ、直流電場を印加しなくても、焦電気が観測されてしまっている。これは、分極軸の電荷が測定電極に回り込んでしまっていることが考えられる。このため、測定方法や試料の電極の構造を検討している。 あわせて、X線回折装置が立ち上がれば、電場下での結晶構造解析を行う予定である。回折装置の立ち上げに更に時間がかかるようであれば、共同実験室の回折装置で測定できるように、試料の形や試料への電源の供給方法などを考えたい。
|
Causes of Carryover |
実験室の移動などで研究の開始が遅れ、満足のいく測定結果が得られるのが遅くなったために、学会などでの発表を見送ったためと、当初予定していた機器よりも安価で実験に支障のない同等の器材を手に入れることができたので、次年度使用額が生じた。 次年度使用額と翌年度分は、研究が遅れていたため、購入を控えていた電源装置や試料周りの器具の作製に充てたい。
|