2018 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical study on spin current control of cold atoms
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18K03493
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
森 弘之 首都大学東京, 理学研究科, 教授 (60220018)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 冷却原子気体 / ボーズ原子 / フェルミ原子 / スピン流 / スピン軌道相互作用 / 非対角閉じ込め / 混合原子系 |
Outline of Annual Research Achievements |
人工スピン軌道相互作用を持つ極低温冷却原子系におけるスピン流の理論解析を行なった。中性原子にはスピン軌道相互作用(SOC)が働かないが、人工的にSOCが存在するような系を作成することが実験的にできるようになったことから、人工SOCを持つ冷却原子系における原子スピンの構造を調べた。ボーズ原子のみからなる系ではすでに先行研究があるが、本研究ではボーズ原子とフェルミ原子の混合系に対して解析を行なった。混合系のボーズ原子のみにスピン軌道相互作用を持たせた場合、ボーズ原子のスピンがスパイラル構造を形成することが明らかになった。このスピン構造を背景にフェルミ原子のスピン流が生じることが期待されたため、非平衡グリーン関数を用いたスピン流の計算を行い、実験的に制御が可能なさまざまなパラメタの関数としてどのような振る舞いをするかを解析した。解析の結果、人工SOCを作るために系に印加しているレーザーの波数を変化させた場合、フェルミ原子のスピン流がピーク構造を持つことが明らかになった。すなわちスピン流を最大にする最適なレーザー波数の存在を指摘した。 さらに関連する事象として、ボーズ・フェルミ混合原子系の閉じ込めに関する技法についても議論した。上記のスピン流の研究では閉じ込めポテンシャルを考慮に入れておらず、その点でさらに深い解析が必要になるが、そもそも閉じ込めポテンシャルとして一般的に用いられているものが最適なのかどうかは自明ではない。そこで別の可能性として非対角閉じ込めと呼ばれる方法の有用性について、シミュレーション解析を行ない、通常の閉じ込めポテンシャルで見られるような密度分布とは異なる特徴的な分布が現れることが明らかになった。より一様に近い分布が得られることから、スピン流の発生にも有利と期待され、解析をさらに進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実験計画出列記していた当初目標のスピン流の発生の確認やスピン流が最大になる条件の特定などは、すべて達成できた。それに加えて、概要に記載したように、閉じ込めポテンシャルに関する解析も行ない、スピン流が生じる上で有利になるポテンシャルとはどのようなものかという視点からの研究も進んだ。これは当初の計画にはなかった部分であり、研究を進める上で解析の必要性が浮上した課題である。この課題もほぼ解決できたことから、当初の計画以上の進展が見られていると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は当初の目標が達成できたので、今年度は計画通りに進める予定である。すなわち、制御可能なスピン流を得る上で必要な条件をすべて満たすことが実験的に可能かどうかを、解析的アプローチと数値的アプローチから検討する。必要に応じて数値的アプローチの新たな計算技法の開発にも取り組む。現在予備的な研究により、機械学習や深層学習の応用について検討する価値があると判断しており、このアプローチに目処が付けば、新たな計算技法として提案できると見込まれる。
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Causes of Carryover |
数値計算用ワークステーションの購入を予定していたが、本格的な数値シミュレーションは次年度に行なうことになり、購入を急ぐ理由がなくなったために物品費がかからなかった点が最も大きい。次年度使用額はコンピュータ等の購入費に充てる予定である。
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