2018 Fiscal Year Research-status Report
反強誘電-強誘電フラストレーションがもたらすリラクサー強誘電体の巨大応答機構
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18K03502
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Research Institution | 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発 |
Principal Investigator |
松浦 直人 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発, 中性子科学センター, 副主任研究員 (30376652)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リラクサー強誘電体 / レーザークエンチ |
Outline of Annual Research Achievements |
巨大な誘電・圧電応答が観測されているリラクサー誘電体のMorphotropic Phase Boundary(MPB;菱面体晶-正方晶組成境界)が,潜在的に反強誘電-強誘電相境界でもあることが系統的な微視的実験により明らかになってきた.本研究では,“相転移を回避する急速な冷却”を用いて,相転移より高温側の巨大応答状態を凍結し,不均一な系における反強誘電-強誘電競合状態の解明を目指している。 2018年度は急速な冷却を行うためのレーザーやレーザー光を集光する為の光学機器を購入し、レーザー加熱システムの構築を行った。急冷する速度は加熱に用いるレーザーの遮蔽速度と試料サイズに依存するが,特に強誘電体のような絶縁体では熱の拡散速度が遅いため,試料サイズが律速になる.通常の実験室で得られる冷却速度を遥かに超える102-103 K/Sの冷却速度を実現するには試料サイズを極力小さくする必要があり、本年度は研磨治具の開発により、薄さ50μmの単結晶試料の作成に成功した。また,予想される競合状態は,冷却速度により,マクロスコピックな強誘電R相,強誘電T相,反強誘電相のみならず,それらのメゾスコピックなドメインが考えられ,散漫散乱の強度はBragg反射より2~3桁低くなることが予想される.微小な試料からの弱い散漫散乱シグナルの観測を行うため、輝度の高い放射光X線が得られるSPring8にて実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最初のSPring8でのX線回折実験では、レーザーにより常誘電相まで加熱することが出来ず、期待したような回折パターンの変化が得られなかった。この原因として現在、以下の項目を検討している。 1)試料サイズ:試料サイズが小さければ小さい程、温度の上昇は大きくなる。2018年度は断面積1mm^2の単結晶試料を用意したが、まだ試料サイズが大きすぎる可能性がある。 2)レーザー集光:レーザー光は実験環境の都合上、レーザー光源から試料近くまで光ファイバーで導入し、試料近くでレンズを用いて集光している。集光系の調整ミスにより試料に伝わるエネルギー密度が減少してしまう可能性がある。 3)レーザー光吸収効率:試料の冷却速度を向上させるために50ミクロンの非常に薄い単結晶試料を用意したが、逆に薄いがためにレーザー光が試料で十分吸収できずに透過してしまう可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、レーザークエンチ法を確立させるために以下の改良を行う。 1)試料断面積の小型化: 更なる温度の上昇の為には断面積の小さな試料を用意する必要がある。これまでの10倍の昇温を実現する為、現在1mm^2の試料断面積を0.1mm^2と1/10にする。 2)レーザー集光システムの改良:光ファイバーを用いることで、その端面でエネルギーが10%ずつロスしてしまう上、ファイバー出口でレーザーは発散光になってしまうため、どうしても集光効率が悪化する。本年度はファイバーを用いずにレーザーを試料に照射する光学系を構築して、集光効率を向上させる。 3)レーザー光吸収効率の向上:レーザー光を吸収する金属の粉体を試料に塗布するなどして、レーザー光の吸収効率を向上させる これらの改良を行ったレーザークエンチを用いることで、相転移より高温側の巨大応答状態を凍結し,不均一な系における反強誘電-強誘電競合状態の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
SPring8でのレーザークエンチ実験を行うためのレーザーや光学機器を購入したが、予定よりも低い金額で購入出来た。生じた次年度使用額は、次年度の光学機器の改良に用いる。
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Research Products
(4 results)