2019 Fiscal Year Research-status Report
Study of pressure-temperature phase diagram of superconductivity competing with electronic nematic and magnetic ordered phases in iron-based superconductor
Project/Area Number |
18K03516
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
三好 清貴 島根大学, 学術研究院理工学系, 教授 (10294365)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 鉄系超伝導 / 圧力相図 / 常磁性マイスナー効果 / 対向アンビルセル / ダイヤモンドアンビルセル |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度においては、FeSe系の圧力相図の解明を目指して超小型DACを用いた圧力下磁化測定と対向アンビルセルを用いた圧力下電気抵抗測定を行った。まず、磁化測定では、2018年度の研究から、静水圧性の高い液体アルゴンを圧力媒体とした場合においても超伝導が6GPa以上で消失する傾向が見られることが分かっていた。2019年度では、初期圧力(=液体アルゴンを封入するときの圧力)を系統的に変化させながら測定を行い、超伝導体積分率の圧力変化に注目した。その結果、初期圧力をPc=0.2-0.3 GPa以上で封入すれば体積分率は高圧下でゼロになる一方、Pc以下で封入すると30%程度の体積分率で超伝導が残留することが分かった。この結果は、Svitlykらによって最近報告されているHeを圧力媒体とした圧力下構造解析の結果と矛盾しない。Svitlykらは超伝導を示すorthoⅠ相が6-7 GPa以上でorthoⅠ相と非超伝導のorthoⅡ相の混合相となることを報告している。以上のことから、既によく知られているSunらにより報告されたFeSeの圧力相図はcubic anvil pressによる完全な静水圧性でのみ成り立つことが推察される。 また、電気抵抗測定では、グリセリンを圧力媒体とし6.5 GPaまでの圧力下で測定することに成功した。グリセリンを使用している場合、アルゴンの場合と比べて静水圧性は悪くなり一軸圧的になるが、5 GPa程度以上で超伝導相と非超伝導相の相分離が見られた。今後、液体アルゴンを用いた電気抵抗測定を行い圧力下磁化測定のデータと併せてFeSe系の圧力相図を確立する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、研究対象とするFeSeおよびFeSe1-xSx系、NaFe1-xCoxAs系やRFeAsO1-xFx系の試料作製についてはほぼ完了している。測定技術に関しては、対向アンビルセルを用いた圧力下電気抵抗測定を液体アルゴンを圧力媒体として行う方法の開発を急いでいるが、成功への目途は立っている。2019年度では、学部4年生の卒業研究において対向アンビルセル用の液体アルゴンバスの製作を行い、アルゴン封入を試行しており、問題点を把握している。具体的には試料空間の断熱性を高めることが重要であり、ジルコニア製の押し棒により油圧プレスからの熱流入を減らせば問題なくアルゴン封入に成功するものと目論んでいる。また上限圧力についても、昨年度は6.5 GPaまでの測定に成功し、今後ガスケットを改良することにより常時8-9 GPa以上に到達できるようにしたい。 また、FeSe系の圧力下磁化測定を適切に行うために必要となるアルゴン封入を極力低圧で実現するための実験手順を2019年度の研究で確立することができた。FeSe系については、圧力下磁化測定はほぼ完了している。液体アルゴンを圧力媒体とした圧力下電気抵抗測定に成功すれば圧力相図を確立することができる。圧力下電気抵抗の測定技術はあと一歩のところまで来ており、それがなされれば、各系に対して磁化測定とともに電気抵抗測定を繰り返し行い、圧力相図の解明がなされていくはずである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績のところで述べたように、FeSeでは、cubic anvil pressでの完全な静水圧下での圧力相図とヘリウムまたはアルゴンを圧力媒体として一軸加圧する準静水圧下での圧力相図は特に高圧領域で顕著に異なるものとなりそうである。この事実を、今後液体アルゴンを圧力媒体とした圧力下電気抵抗測定を実現して検証し、報告する予定である。また、FeSe1-xSx系についても同様にMatsuuraらにより報告されたcubic anvil pressによる圧力相図との違いに焦点を当てて調査を進め報告する。FeSe1-xSx系についてはx≦0.1の単結晶試料は作製済みであるので、2020年度はより高濃度域の単結晶試料を作製する必要がある。FeSeおよびFeSe1-xSx系の圧力相図調査においてもう一つの有力な測定手段は圧力下の磁場中冷却後磁化(FC磁化)測定である。FeSe系において、圧力相図中で実現すると考えられている磁気相と超伝導相の混合相ではFC磁化がTc以下でも正になる常磁性マイスナーの振舞をすることが予備実験で示唆されておりこの点についても重点的に検証する予定である。 2020年度においてはNaFe1-xCoxAs系やRFeAsO1-xFx系も積極的に研究対象とする予定である。これらの系では、これまでに圧力下電気抵抗測定の上限圧力が限られていたために研究が滞っていた面があるが、対向アンビルセルを用いた10 GPa級の測定を早い段階で実現させて圧力相図を解明し報告する。
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Causes of Carryover |
少しだけ残金が残ったが、次年度に適切に使用する予定である。
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