2019 Fiscal Year Research-status Report
光イメージング技術を用いたサブミクロン領域における磁性と誘電性の同時評価法の開発
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18K03521
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
真中 浩貴 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (80359984)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 複屈折 / イメージング技術 / 偏光解析技術 / 旋光性 |
Outline of Annual Research Achievements |
サブミクロン領域における物性研究の重要性が, マクロ領域で現れる物性現象と原子描像との橋渡し役として説かれるようになってきた。このような背景の下で申請者は, 急速に発展してきた光イメージセンサ技術と従来の光学顕微鏡とを組み合わせることによって, サブミクロン領域での情報が得られる複屈折イメージング装置を開発してきた。 今年度は入射偏光の切り替え器を整備して複屈折と旋光性が共存する系の測定方法の確立を目指した。その結果, 円偏光の光を用いた複屈折測定では旋光性の影響をほぼゼロにすることができることが分かった。一方, 直線偏光を用いた旋光性測定では, 複屈折の影響が無視できないことが分かった。しかし入射偏光と出射偏光の差分を計算することで, 一部の偏光条件では旋光性と複屈折を分離することに成功した。今後は様々な偏光条件で測定が可能となるような実験配置を探索し, 測定手法の最適化を計る。 磁性強誘電体(C2H5NH3)2CuCl4では247Kで強誘電相転移を起こし, 37uC/cm2もの大きな自発分極が出現するとこれまで報告されていた。しかし最近, その異常は本質的な振る舞いではなく, 実際の強誘電相転移温度は25.8 Kで, 自発分極はc軸に平行な方向に出現し, その大きさはこれまでの値よりも4桁ほど小さいとの報告があった。そこで今年度は本物質の複屈折イメージング測定を行った。c軸に平行に円偏光の光を入射して複屈折測定を行った結果, 232 Kでの構造相転移の兆候は観測できたが, 強誘電相転移の兆候はなかった。一方, [111]方向に平行に円偏光の光を入射して複屈折測定を行った結果, 247 K付近に強誘電相転移の兆候は現れず, 25 K付近に強誘電相転移を示唆する異常が現れた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究ではカイラル結晶SiO2(人工水晶)を用いて, 開発してきた測定・解析手法の有効性を検証してきた。今年度, 入射光の偏光状態を変化させながら測定できるようになったため, より精度の高い実験が可能となった。しかしながら, 旋光性と複屈折を厳密に分離するためにはいくつかの困難があることが分かった。今後は, 近似解を得る方法の確立を急ぐ。
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Strategy for Future Research Activity |
複屈折と旋光性が共存する系として旋回性相転移現象がある。しかしながら過去の報告例を見ても, 両者を定量的に分離することはできていない。一方, 強誘電体KH2PO4結晶では, 複屈折だけでなくわずかな旋光性も存在することが分かっており, すでにそれらの寄与を分離する評価が行われている。これらの研究成果を参考にしながら, 解析的に複屈折と旋光性を分離する方法を検証していく必要がある。
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Causes of Carryover |
今年度は複屈折測定用冷凍機のメンテナンスを実施する予定であったが, マシンタイムとの調整が上手くできなかったため, メンテナンスが行えず, 予算の執行が予定通りに進まなかった。来年度の前半にはメンテナンスを実行して, 予定通りに予算を執行する予定である。
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Research Products
(12 results)