2020 Fiscal Year Research-status Report
光イメージング技術を用いたサブミクロン領域における磁性と誘電性の同時評価法の開発
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18K03521
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
真中 浩貴 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (80359984)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 複屈折 / イメージング技術 / 偏光解析技術 / 旋光性 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨今, サブミクロン領域における物性研究の重要性が, マクロ領域で現れる物性現象と原子描像との橋渡し役として説かれるようになってきた。このような背景の下で申請者は, 急速に発展してきた光イメージセンサ技術と従来の光学顕微鏡とを組み合わせることによって, サブミクロン領域での情報が得られる複屈折イメージング装置を開発してきた。 今年度は強誘電体KH2PO4の複屈折イメージング測定に取り組んできた。本物質は123Kで強誘電転移を起こすことが知られているが, その強誘電転移の起源が常誘電相におけるプロトントンネリングによるものか, もしくはPO4四面体が局所的に歪んでいるためなのかについて未だに結論が得られていなかった。そこで局所的な歪みの有無が複屈折に現れる事を期待して, ac面とab面の薄板試料を用いた複屈折イメージング測定を行った。 その結果, 過去の報告では強誘電相転移と同時にac面試料の位相差が大きく減少するとされていたが, 今回の結果では, 123Kでは特に大きな変化はなく, 123Kよりも明らかに低い温度で急激な減少が起こることを突き止めた。この結果は, 強誘電相転移にともなって結晶構造の対称性が正方晶から斜方晶へと低下してドメインが形成されても, ac面試料の複屈折には影響がないためと分かった。一方, 123Kよりも温度を下げると, 自発分極の発達によって180度ドメインが形成されるため, そのドメインの回転現象によって位相差が急激に減少したと考えられる。一方, ab面試料では123Kとさらに低温の2箇所で異常が現れた。これらは結晶構造の相転移に伴うドメイン形成と, 自発分極の発達による180度ドメインの形成によって引き起こされた異常であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は旋光性と複屈折の分離を目指して, よく知られている強誘電体KH2PO4の実験に取り組んだが, これまでよく分かっていなかったドメイン形成過程を特定するために多くの時間を必要とした。来年度は旋光性と複屈折の分離に取りかかる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
複屈折と旋光性が共存する系として強誘電体KH2PO4に注目した。本物質を用いた複屈折と旋光性の分離に関する報告を参考にして, 今年度新たに得られたドメイン形成に関する情報との整合性をとりながら研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
今年度は複屈折測定用の冷凍機のメンテナンスを春に実施する予定であったが, 新型コロナウィルスの影響で夏まで実施できず, その後の実験計画が大幅にずれてしまった。その他にも, 予定していた学会に参加するための旅費等も執行できずに残ったため, 来年度に実施する予定である。
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Research Products
(2 results)