2019 Fiscal Year Research-status Report
固体物質系と光格子量子シミュレータを繋ぐ新奇フラストレート量子物性の理論研究
Project/Area Number |
18K03525
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
山本 大輔 青山学院大学, 理工学部, 助教 (80603505)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 量子シミュレーション / フラストレート磁性 / 冷却原子気体 / 負温度 |
Outline of Annual Research Achievements |
冷却原子気体を用いた量子フラストレート磁性の量子シミュレーション研究では、現在のところ極低温までの冷却や反強磁性の実現が困難なこともあり、その重要性と必要性に反してあまり多くの成果が得られていない。我々はこれらの困難を打開する妙案として「負の絶対温度」をもつ気体を利用した量子シミュレーション方法を提唱した。熱平衡系のミクロな状態はボルツマン因子に比例する占有確率に従って分布する。通常の物質ではエネルギーが低い状態ほど多く占有され、エネルギーが高い状態の占有確率は指数関数的に小さくなっている。しかし光格子中の原子気体のような孤立系では、エネルギーが高いほど多く占有されるような熱平衡状態を人工的に作成することができる。このような状態は定義上、絶対温度(ケルビンスケール)で負の値を持っていることになる。 我々は光格子に充填したBose原子気体の物質波の位相をスピンと見立てることで量子磁性体の量子シミュレータとすることを想定した。この系に対し、相互作用やトラップポテンシャルの反転に加えて光照射による位相刷り込みを行うことで負温度の熱平衡状態を実現できることを数値シミュレーションによって示した。通常は物質波の位相は揃いたがる(強磁性)が、「負の絶対温度の世界」ではすべてが反転するために反強磁性を実現できる。したがって光格子の形状を三角格子のようなバイパータイトでない格子形にすることでフラストレーションを導入することができる。 将来的には、この負温度気体で作成した量子シミュレータを用いて様々な物質の性質を解析したり、新しい物質を設計したりといったことが可能になると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画をすべて順調に遂行した。前年度分の研究成果の学術雑誌への出版を終えただけでなく、本年度分の成果の出版も完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果を基盤としてさらに発展させる。具体的には負温度原子気体を利用して量子スピン液体状態を人工的に作成することを目指し、光格子を三角格子からカゴメ格子に徐々に変化させたときのダイナミクスと熱平衡状態の相転移現象を解析する。
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Causes of Carryover |
(理由) 研究計画時に予定していた大規模計算用ワークステーションの購入を次年度以降に延期したため (使用計画) 延期していた大規模計算用ワークステーションの購入などを行う
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