2019 Fiscal Year Research-status Report
d電子とπ電子が共存する擬二次元有機伝導体の磁性研究
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18K03526
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
石井 康之 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (90391854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
開 康一 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (00306523)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 有機伝導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
λ-(BETS)2FeCl4は磁場誘起超伝導体として注目され盛んに研究されてきた。高磁場の超伝導発現機構は解明されたと言っても良いが,低磁場の反強磁性状態,金属絶縁体転移の機構は未解決である。そこで本研究は,λ-(BETS)2FeCl4の磁気秩序状態における鉄の3dスピンの役割,そして金属絶縁体転移の起源を,圧力下磁化測定とμSR測定により明らかにすることを目的とする。今回のターゲットとなる物質は,lambda相とよばれる相である。しかし,合成条件があまり明確になっておらず,合成が困難である。そこで,最適な試料合成条件を探索している。 2019年度は主に昨年度より引き続き,合成条件の最適化と,圧力下磁化測定のための基礎データを取得した。 試料合成においては,これまで知られていたkappa相とlambda相の他に,異なる組成比の試料や,鉄が分解してBETSとClのみの塩が生成してしまうことがわかった。そのような中で,溶媒の割合と温度条件がわかってきたので,試料合成が進行中である。現在,µSRと磁化測定に必要な目標量の70パーセントまで合成が終わった。 圧力下磁化測定のための予備測定では,圧力セルのバックグラウンドを測定し,またそのセルをつかって,錫マノメータを用いて5 kbarまでの圧力校正を行なった。また,圧力効果は既知であるが,磁化率が非常に小さいMEM(TCNQ)2の予備測定を行い,磁化率の非常に小さい試料でも測定が可能であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
試料合成を行う際,電解質が分解してしまいBETSとClのみの塩が発生してしまうことがあった。この試料は形状から判断が難しく,試料同定に時間がかかってしまうことがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
溶媒の条件は見えてきていて,試料合成が目標の70パーセント程度まで到達した。7月には残りの試料合成が終了する予定であり,8月から測定が開始できる見込みである。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行により,学会発表のための国内出張が不可能となることが明らかになったため,その段階で研究計画を変更し,翌年度購入予定であった試薬と圧力試験のための消耗品を購入し試料合成と追加の加圧試験を行なった。 そのため,試料は2020年度前半でほぼ合成が終わる見込みで,2020年度に経過報告のための学会発表を行う。
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Research Products
(1 results)