2018 Fiscal Year Research-status Report
量子スピンカゴメ格子反強磁性体におけるスピン液体の実現とトポロジカル秩序の探索
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18K03529
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉田 紘行 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (30566758)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カゴメ反強磁性体 / スピン液体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、量子スピンカゴメ反強磁性体の良いモデル物質CaCu3(OH)6Cl2・0.6H2O(Ca-kapellasite)に着目し、本物質の磁気基底状態で実現する揺らぎを有する基底状態の解明、超強磁場下磁化測定による強磁場相の探索、新規カゴメ反強磁性体の探索と物性評価を目的として研究を行った。 H30年度は純良な単結晶における熱ホール効果測定、磁気トルク測定を行った。熱ホール効果の実験は東京大学物性研究所(山下G)との共同研究により行った。その結果、Ca-kapellasite単結晶において通常の絶縁体では観測されない熱ホール効果の観測に成功した。また、理論計算手法の1つであるSchwinger-boson法を用いて量子力学的効果であるベリー位相を取り入れた計算を実施することで、カゴメスピン液体相におけるベリー位相効果がCa-kapellasiteの熱ホール効果の起源であることを初めて明らかにした。単結晶を用いた磁気トルク測定では、起源は未解明であるものの最低温(2 K)で磁場を印加すると5 Tで磁化容易軸がa+2b方向からa方向へと変化する現象を見出した。 上記に加え、H30年度には関連する量子カゴメ反強磁性体CdCu3(OH)6Cl2の磁性解明に取り組み、本物質が異方的カゴメ反強磁性体のモデルであることを示し、帯磁率の温度依存性及び強磁場磁化過程の振る舞いを半定量的に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H30年は、Ca-kapellasite単結晶における熱ホール効果の観測に成功し、またその起源を解明することに成功しており、これは本物質の基底状態の解明に関して大きな進展といえる。一方で、当初研究計画で予定していた微視的実験や超強磁場磁化過程の測定はまだ完了していない。これについてはH31年度以降に取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
Ca-kapellasiteではH30年度までの予備的なNMR実験によって、磁気転移温度T*以下においてスピン揺らぎが存在することが示唆されている。H31年度は単結晶を用いたNMR実験を行うことにより、詳細な揺らぎの評価、またその異方性について明らかにしたい。一方で、100 Tを超える超強磁場下での磁化測定を行い、ヘキサマグノンの超格子に由来する磁化プラトーの探索を目指す。
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Research Products
(10 results)