2019 Fiscal Year Research-status Report
Study of strongly correlated organic conductors by muon spin rotation and relaxation method under low temperatures and high pressure
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18K03533
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
佐藤 一彦 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60225927)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 弘三 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (50323374)
髭本 亘 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (90291103)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 有機伝導体 / ミュオンスピン回転緩和法 / 低温 / 高圧 / 磁性 |
Outline of Annual Research Achievements |
大強度陽子加速器施設(J-PARC)のミュオン実験施設において、1GPa以上の高い圧力下でミュオンスピン回転緩和法実験を行える新たな圧力容器を設計・作成した。作成した圧力容器について室温における加重テストを行い、6tonの加重に耐えることを確認した。この加重は摩擦を無視すれば1.5GPaに相当し予定通りの性能である。しかし、加圧・冷却テストを繰り返している際に圧力容器のネジが破損してしまい、本年度に実施を予定していたミュオンスピン回転緩和法実験は延期せざるを得なくなってしまった。新たな圧力容器は2020年7月に完成予定であり、圧力下でのミュオン実験は2020年12月にJ-PARCにて行う予定である。 β’-(BEDT-TTF)2ICl2の磁気的性質を理解するうえで、類似物質の研究は欠かせない。本年度はBEDT-TTF分子の外側の4つのS原子をSe原子に置換したBEDSe-TTF分子を用いたβ’-(BEDSe-TTF)2ICl2とβ’-(BEDSe-TTF)2IBr2のミュオンスピン回転緩和法実験を常圧にて行った。両塩は同じβ’構造を取り、それぞれ18K及び12Kで反強磁性転移を示す。β’-(BEDT-TTF)2ICl2の反強磁性転移温度は22Kであり、BEDSe塩においても類似のミュオンスピン回転緩和信号が得られるものと期待したが、反強磁性状態において明確なミュオンスピン回転信号を示したβ’-(BEDT-TTF)2ICl2とは異なり、β’-(BEDSe-TTF)2ICl2とβ’-(BEDSe-TTF)2IBr2においては反強磁性状態において明確なミュオン回転信号は得られなかった。このことは単純にはBEDT-TTF塩とBEDSe-TTF塩では反強磁性状態が異なることを意味するが、ミュオンサイトがBEDT-TTF塩とは異なる可能性などもありさらなる検討が必要である
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度の研究の主目的は開発した新しいミュオンスピン回転緩和実験用圧力容器を用いて実際に高圧実験を行うことであった。しかしながら残念なことに加圧・冷却テストを繰り返している過程で作成した圧力容器のネジが破損してしまい、新しい圧力容器を用いたミュオンスピン回転緩和法を2020年12月に延期せざるを得なくなった。ただ新たに設計した圧力容器の室温における加圧テストの結果により、圧力容器は設計通りの圧力を発生することが確かめられたので、設計は変更せずに同じ圧力容器を発注し、2020年7月には新たな圧力容器が納品される予定である。本研究の主対象物質であるβ’-(BEDT-TTF)2ICl2の類似物質であるβ’-(BEDSe-TTF)2ICl2とβ’-(BEDSe-TTF)2IBr2の常圧下におけるミュオンスピン回転緩和法実験は順調に終了した。現在実験データを詳細に解析中であり、β’-(BEDT-TTF)2ICl2とのミュオンスピン回転緩和信号との違いについて検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
新たな圧力容器は2020年7月に完成する予定であり、それを用いたJ-PARCにおけるミュオンスピン回転緩和法実験のビームタイムは2020年12月1日から5日までと既に決定している。7月から11月の間に圧力容器の性能テストを行い、容器の特性を十分に把握したうえでビームタイムに臨む。実験に用いるβ’-(BEDT-TTF)2ICl2試料は現状で1g準備できており、十分である。2021年3月までに実験データの解析を行い、β’-(BEDT-TTF)2ICl2の圧力下における磁性状態の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
圧力容器を2020年度に新たに発注する必要が生じたため、2019年度の使用を若干抑えた。2020年度に繰り越した分は圧力容器の作成費に費やす。
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