2018 Fiscal Year Research-status Report
1次元ヘリウム系における超流動量子相転移の臨界現象
Project/Area Number |
18K03535
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
谷口 淳子 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (70377018)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 量子臨界現象 / 朝永-ラッティンジャー液体 / 超流動 |
Outline of Annual Research Achievements |
1次元ナノ細孔中4Heは,希薄な(薄膜)領域から加圧液体領域までの広い密度範囲において,朝永‐ラッティンジャー(TL)液体特有の超流動応答が観測されており,1次元量子系の物性を調べるのに適した系と考えられている.本研究課題は,圧縮率や超音波吸収係数・音速の測定により,超流動が消失する量子臨界点近傍の臨界現象を探索・解明することを目的としている.申請時は,高圧領域の非超流動液体相を研究対象と考えていた.しかし,その後,希薄(薄膜)側でも面密度の増加により非超流動から超流動相への量子相転移が起こる可能性が報告されたことから,薄膜領域まで研究対象を拡張することとした. 今年度は,まず,圧縮率の測定に従来の手法を適用できる希薄領域を測定対象とし,圧縮率,比熱,超音波測定を行った.圧縮率は,超流動が現れる面密度(nc)で極小を持つことが明らかになった.一方,比熱の温度依存からは,ncの低密度側で圧縮率が減少に転じる面密度で,流体相が消失し,全てガラス的な固体となることが示唆された.さらに,超音波測定からも,比熱の温度依存と矛盾しない結果が得られた.以上から,ncより高面密度側ではガラス的固相の上に液相が形成され,その液相で超流動が発現していると考えられる.この結果は,nc近傍の物性が量子揺らぎの効果を考慮せずに説明されうることを示唆している.このように,nc付近の振る舞いを複数の物理量を用いて総括的に調べた研究は,本研究が初めてであり,重要な知見が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,もともと予定していた加圧領域ではなく,非常に希薄な(薄膜)領域における量子臨界現象の有無について調べた.そのため,高圧領域における圧縮率測定系の整備が遅れ,次年度に持ち越された.一方,薄膜領域の圧縮率,比熱,超音波測定の結果から,超流動が現れる面密度(nc)近傍の物性について,重要な知見を得た.このことから,総括的にはおおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,まず,超音波測定をより高圧の領域に拡張し,量子臨界現象の探索を行うことを予定している.平行して,圧縮率の測定系の構築を行う.また,今年度の比熱・圧縮率から得られた知見を論文にまとめ,出版したいと考えている.
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Causes of Carryover |
今年度は希薄な領域を対象とした超音波実験から,重要な結果が得られていたので,圧縮率の測定も希薄領域に特化して詳細に行った.希薄領域では,既存の測定手法が適用できるため,当初予定していた高圧領域用の装置系の構築に必要ナオシロスコープや勤続材料の購入を取りやめた.これらの測定機器および材料は次年度,測定系の構築を行う際に購入する.
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Research Products
(8 results)