2019 Fiscal Year Research-status Report
Dual fermion approach to Mott transition and high-energy spectroscopy of multi-orbital systems
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18K03541
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
田中 新 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (70253052)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | デュアルフェルミオン法 / 強相関電子系 / ハバードモデル / 多軌道系 / 金属絶縁体転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、強相関電子系の電子状態を記述するための理論である、デュアルフェルミオン法を用いて、多軌道系のモット転移近傍での電子状態について議論することを目的としている。現在研究で用いているソフトウエアは1軌道の場合にのみデュアルフェルミオン法の計算ができるが、これを多軌道系でも計算を行えるようにプログラム開発を進めている。これと並行して、1軌道系のモット転移近傍の電子状態を理解する上で重要であると考えられる、銅酸化物超伝導物質の擬ギャップ相について、正方格子ハバードモデルを用いて調べた。その結果、角度分解光電子分光で観測されているフェルミ準位近くの擬ギャップの形成、それによってフェルミ面の一部が失われたフェルミアーク、さらにはリッフシッツ転移と呼ばれるフェルミ面のトポロジーが変化する転移等を良く再現することがわかった。同様の計算はクラスター動的平均場近似あるいは動的クラスター近似などでも行われているが、これらの計算では有限サイズのクラスターを用いており、短距離の反強磁性揺らぎの効果しか計算に取り入れることができない。そのため、フェルミ準位近傍のスペクトル関数の波数依存性の詳細を議論することは困難である。また、銅酸化物超伝導物質の中性子非弾性散乱実験において「砂時計」と呼ばれる特異な分散関係を持った磁気励起が観測されている。この特異な磁気励起の起源を理解するために、動的スピン帯磁率の計算も行った。小さいホール濃度ではY字型の分散構造が得られるが、大きいホール濃度のときは、実験の「砂時計」と類似の分散関係を持った磁気励起が得られた。これらの内容について日本物理学会および国際会議で発表を行った。また、本研究で用いている計算手法と正方格子ハバードモデルのハーフフィリングでの金属絶縁体転移についての論文も発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多軌道系の計算についてランチョス対角化法を用いた2体グリーン関数の計算精度の問題があり、これを解決するのに時間を要したため、デュアルフェルミオン法の計算を多軌道系へ適応するためのソフトウエアの開発が予定より遅れている。しかし、1軌道の場合については、2体グリーン関数の計算方法の改善によって、計算をより高精度かつ安定に行えるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
デュアルフェルミオン法の計算を多軌道系へ適応するためのソフトウエアの開発をできるだけ早く完成させ、多軌道系の電子状態の計算を行う。具体的な研究対象としては、ペロブスカイト構造のNi酸化物のような金属絶縁体転移を起こす典型的な多軌道系およびトポロジカル絶縁体との関連でも興味を持たれる、非共型な結晶対称性を持つ強相関系の電子状態である。また、これと並行して、デュアルフェルミオン法を用いて光学励起による遷移過程を取り入れたスペクトルの理論計算を展開する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルス対策のため、予定していた出張が中止になったためである。本年度も同様の問題が生ずる恐れがある。その場合は、新たなワークステーションの購入に用いるなどの費用の有効活用を考える。
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Research Products
(4 results)