2021 Fiscal Year Research-status Report
Dual fermion approach to Mott transition and high-energy spectroscopy of multi-orbital systems
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18K03541
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
田中 新 広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 准教授 (70253052)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | デュアルフェルミオン法 / 強相関電子系 / ハバードモデル / 金属絶縁体転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
モット転移近傍の典型物質である、銅酸化物超伝導体の異常金属状態と擬ギャップ状態の関係について、最近接tと次近接ホッピングt’を考慮した正方格子ハバードモデルに対し、デュアルフェルミオン法を用いて調べた。 オンサイトのクーロン相互作用の大きさをU/t = 8 として、 t′ を変化させると、t′ = 0 では、ハーフ・フィリングから電子密度が n ~ 0.8 までは、十分低温 (T /t ~ 0.1) で相分離が起こる。この場合、X 点でスペクトル関数に擬ギャップが開く温度が相分離が起こる温度より高温であるのは n > 0.86 までである。一方、銅酸化物超伝導体のパラメータに近いと考えられるt′/t = -0.3 では、 擬ギャップ温度は、相分離が起こる温度より常に高温で、相分離が消失する電子密度 nSG ~ 0.81で擬ギャップも消失し、銅酸化物超伝導体のn-T相図の状況に近い。 t′/t = -0.3 の場合について、磁気的量子臨界点 nQCP ~0.775とnSG の間の n でスペクトル関数を調べると、バンド分散は X 点の近傍の広い範囲で平らであり、自己エネルギーの虚部は、この範囲で T について線形に近くなっている。このとき、 抵抗率も同様に広い温度範囲で T について1次となり、異常金属状態の特徴を捉えている。t′ = 0 でも、nQCP ~ 0.785 と nSG ~ 0.8 の間の n で、自己エネルギーの虚部は T について線形に近いが、その波数空間での範囲は限られている。 これらの結果から、異常金属状態と擬ギャップ状態のどちらも反強磁性的な揺らぎに起因しているが、異常金属状態の特徴である、抵抗率がT について1次となるのは、先行研究のようにnQCPの近傍というよりも、むしろ nQCP と nSG の間の電子濃度であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多軌道、多サイト系非共型な結晶構造をもつ強相関電子系へ適応するため、現在用いているデュアルフェルミオン法の計算をするプログラムを1軌道の場合から拡張する作業が予定よりも遅れている。また、角度分解光電子分光等の実験と精密な比較できるように、スペクトル関数の計算方法の改良を行なった。 この方法を用いて、銅酸化物超伝導体の擬ギャップ状態、フェルミアーク、異常金属状態等についての議論を行い、現在投稿論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在用いているデュアルフェルミオン法の計算をするプログラムの多軌道、多サイト系への拡張を完了する。ペロブスカイト構造のNi酸化物のような金属絶縁体転移を起こす典型的な多軌道系について、特にモット転移近傍についての電子状態について調べる。また、トポロジカル絶縁体との関連でも興味を持たれる、非共型な結晶対称性を持つ強相関系の電子状態を調べる。 特に、スピン、軌道、電荷揺らぎがフェルミ準位付近のスペクトル関数にどのような影響を及ぼすかを調べ、角度分解光電子分光等の実験と比較を行う。
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[Journal Article] CaCu3Ru4O12: A High-Kondo-Temperature Transition-Metal Oxide2022
Author(s)
D.Takegami, C-Y Kuo, K.Kasebayashi, J-G Kim, C.F.Chang, C.E.Liu, C.N.Wu, D.Kasinathan, S.G.Altendorf, K.Hoefer, F.Meneghin, A.Marino, Y.F.Liao, K.D.Tsuei, C.T. Chen, K-T Ko, A.Guenther, S.G.Ebbinghaus, J.W.Seo, D.H.Lee, G.Ryu, A.C.Komarek, S.Sugano, Y.Shimakawa, A.Tanaka, T.Mizokawa, J.Kunes, L.H.Tjeng, A.Hariki
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Journal Title
Phys. Rev. X
Volume: 12
Pages: 011017 1-12
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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