2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of emergent electronic properties originated from geometric structures of crystals and local correlation effects
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18K03542
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡辺 真仁 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (40334346)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | グリュナイゼンパラメーター / 熱膨張係数 / 比熱 / 準結晶 / 量子臨界現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
準結晶Yb15Al34Au51は常圧・零磁場で非従来型の量子臨界現象を示し、圧力下で臨界性がそのまま保たれる物質として注目を集めている。最近この物質のグリュナイゼンパラメータΓ(T)が観測され、驚くべきことに降温につれてΓ(T)は減少し、最低温T=70mKで有限値をとることが発見された。一方、フェルミ液体的振る舞いを示す近似結晶Yb14Al35Au51のグリュナイゼンパラメータΓ(T)も観測され、最低温T=70mKでの絶対値|Γ|は準結晶の値よりも大きいことが観測された。これまで、「いかなる量子臨界点でもグリュナイゼンパラメータが発散する」ことが繰り込み群により提唱されており、この実験事実をいかに理解するかは重要である。
そこで磁気量子臨界点近傍の比熱C(T)、熱膨張係数α(T)、グリュナイゼンパラメータΓ(T)の完全な表式をスピンゆらぎのSCR理論により導出した。本研究では(1)この枠組みを基に価数転移の量子臨界点近傍における比熱、熱膨張係数、グリュナイゼンパラメータを臨界価数ゆらぎのSCR理論により計算する枠組みを構築した。 (2)次に、近似結晶のYbの4f電子とAlの3p電子からならる周期アンダーソン模型から出発して、圧力下の価数転移の量子臨界点における価数ゆらぎのSCR方程式を解いて、(1)で構築した枠組みを用いてC(T)、α(T)、Γ(T)を計算した。 これにより、磁化率の零磁場極限での臨界性および有限磁場下でのT/Bスケーリングを統一的に説明できることがわかった。準結晶における降温につれて発散しないグリュナイゼンパラメータΓ(T)は圧力に対してrobustな量子臨界性の自然な帰結であることがわかった。また、常圧における準結晶と近似結晶の最低温でのΓ(T)の大きさの違いは、臨界価数ゆらぎの特徴的温度T0と近藤温度TKの圧力微分の大きさの違いを反映していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までの研究により、磁気量子臨界現象における、比熱、熱膨張係数、グリュナイゼンパラメーターをスピンゆらぎのSCR理論に基づいて熱力学的にコンシステントな枠組みで導出することに成功した。本年度はこの枠組みに基づいて価数量子臨界現象における比熱、熱膨張係数、グリュナイゼンパラメーターを計算する枠組みを構築することができた。さらに、その枠組みを近似結晶Yb14Al35Au51に適用した。近似結晶の単位胞無限大の極限が準結晶Yb15Al34Au51であることを用いて、準結晶Yb15Al34Au51で最近観測された特異な熱膨張係数、グリュナイゼンパラメーターの振る舞いを、既に観測されていた比熱も含めて統一的に説明することに成功した。以上から、結晶の幾何学的構造に由来する新規電子物性の開拓が進んでおり、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
準結晶の特異な臨界体積効果の理論的説明ができたので、引き続き準結晶および周期的な結晶構造をもつ近似結晶の新規物性の開拓に取り組む。また、強相関電子系および準結晶などの関連する物質の実験と本研究による理論計算との比較を行うため、実験研究者と活発な意見交換を行う予定である。
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Causes of Carryover |
今年度に解析理論の枠組みの構築の研究が著しく進展したので、今年度は解析理論の構築に集中的に取り組んだ。そのため、当初予定していたコンピューターを用いた数値計算と研究の順番を入れ替えた。次年度に予定していた解析理論の構築が今年度にほぼ実行できたので、次年度にまとめて数値計算の遂行・解析に必要な物品の購入を行う計画である。
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