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2018 Fiscal Year Research-status Report

室温巨大磁気抵抗を示す二重ペロブスカイト型マンガン酸化物単結晶体の探索

Research Project

Project/Area Number 18K03546
Research InstitutionYokohama City University

Principal Investigator

山田 重樹  横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科(八景キャンパス), 准教授 (50312822)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2021-03-31
Keywords巨大磁気抵抗 / 電荷整列 / 反強磁性磁気秩序 / 単結晶体 / 室温・低磁場 / 放射光x線回折 / 単結晶中性子線回折
Outline of Annual Research Achievements

二重ペロブスカイト型マンガン酸化物の1つである NdBaMn2O6 が室温・低磁場で巨大磁気抵抗効果を発現する起源を探るため、単結晶体を用いた放射光x線回折測定を行った。その結果、300 K 以下の絶縁体相でのユニットセルが、Mn3+ と Mn4+ のイオンが空間的に配列している「電荷整列」と呼ばれる状態のときと同じ大きさであることが分かった。もし、NdBaMn2O6 の絶縁体相が電荷整列に起因するものであるとすると、巨大磁気抵抗は電荷整列融解に起因しているものとなる。これは転移の急峻性などの結果とも一致している。しかし、NdBaMn2O6 は235 K 以下の低温でA型(層状)の反強磁性体となることが粉末中性子線回折測定より報告されており、この磁気構造は電荷整列状態とは矛盾する。そこで、次に磁気構造が粉末と単結晶体では異なるのではないかという仮説をたて、単結晶体の中性子線回折測定を行った。その結果、単結晶体であっても反強磁性相の磁気構造はA型であることが分かった。また、この測定では放射光x線回折測定で観測されたのと同じ大きさのユニットセルを示す回折スポットも観測されている。この矛盾を明らかにすることが室温・低磁場での巨大磁気抵抗の発現機構の解明の重要なカギとなっていると考えている。そこで、現在は得られた中性子線回折測定のデータを用いて結晶構造解析を行っている。
放射光x線回折測定は、高エネルギー物理学研究所の Photon Factory で、単結晶中性子線回折測定は、JParc の Senju にてそれぞれ行った。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

申請時、小さな単結晶で行った放射光x線構造解析により絶縁体相的な性質は軌道整列に異方的な格子歪の効果が加わることで発現していると考えており電荷整列の寄与は全く考えていなかった。それが、大型単結晶体を用いた放射光x線構造解析により、絶縁体相が電荷整列相である可能性がが強く示唆される結果を得たのが大きな発見であった。電荷整列融解であれば3次元的な絶縁性や巨大磁気抵抗の変化の急峻性などの多くの観測結果を説明することが出来、この観測結果はこの研究課題を大きく前進させるものであると考えた。しかし、室温で安定な電荷整列が、2 T 程度の低磁場で融解してしまうことはこれだけでは説明できない。また、粉末中性子線回折研究により報告されている、この相でのA型の反強磁性磁気秩序は電荷整列状態とは相いれないものであることも課題として残っていた。そこで、特に後者の課題を明らかにするべく、単結晶体での中性子線回折測定を行った。当初、粉末と単結晶体では磁気構造が異なるのではないかというという仮説を立てていたが、実際は電荷整列を示唆するユニットセルと、A型反強磁性の磁気構造を併せ持つという結果となった。ここまで、当初考えていた仮説とは全く異なる結果となっているが、それはこれらの結果がこれまで他の物質でも全く観測されたことないものであることを意味しており、これが室温・低磁場の巨大磁気抵抗の起源を明らかにする鍵となっていると考えている。そのため、ここまで室温・低磁場の巨大磁気抵抗のメカニズムの解明は順境に進んでいると考えている。このまま進めることで、新物質の探索にもつなげられると期待している。

Strategy for Future Research Activity

まずは、単結晶中性子線回折測定の結果を用いた結晶構造解析を行うことで、絶縁体相の結晶状態を明らかにする。この物質は、300 K で 金属-絶縁体転移をし、235 K で反強磁性相転移をする。すなわち、235 K と 300 K の間では絶縁体相でありながら磁気秩序が存在しない相となる。中性子線回折測定ではこの温度領域(270 K) で、構造解析に必要な回折実験をおこなったので、まずはそのデータを用いて結晶構造解析を行う。さらにそこで得られた構造データを用いて、低温(100 K)で磁気構造を含めた構造解析行う予定である。この解析により、この物質の絶縁体相の軌道、電荷、スピン空間的な秩序状態が明らかになれば、室温という高温で安定な絶縁体相が比較的低磁場で融解してしまう理由を解明できるのではないかと考えている。その起源を解明することでより実用に適した条件で巨大磁気抵抗効果を発現する物質の作製の指針を得られると期待しており、その指針に則して物質の探索を行う予定である。

Causes of Carryover

2018年度は大型で良質な単結晶作製に注力していた。これらの実験に必要とした費用は所属している大学より交付されている研究費を使用したため本科研費での使用は無かった。2019 年度は作製した単結晶試料を用いて、物性研究を行う予定である。特に、申請時に記載した電気伝導測定を行うためのシステムを構築する予定であり、今年度繰り越し分は主にそのシステム構築に使用する予定である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2018

All Presentation (2 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)

  • [Presentation] 二重ペロブスカイト型Mn酸化物の電荷整列相2018

    • Author(s)
      山上恭、山田重樹、佐賀山基、有馬孝尚
    • Organizer
      日本物理学会
  • [Presentation] Magneto-Resistance of NdBaMn2O6 Single Crystal2018

    • Author(s)
      Shigeki Yamada,Kirari Ogawa, Nobuyuki Abe, Hajime Sagayama, Taka-hisa Arima
    • Organizer
      International Conference on Magnetism
    • Int'l Joint Research

URL: 

Published: 2019-12-27  

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