2018 Fiscal Year Research-status Report
スタッキングナノワイヤーにおけるスピン液体状態のNMR・μSRによる研究
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18K03548
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
後藤 貴行 上智大学, 理工学部, 教授 (90215492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 栄男 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (40327862)
石井 康之 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (90391854)
堀 顕子 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (90433713)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 一次元ナノワイヤー / NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
最近、堀[1]らによって合成された金属ナノワイヤーはその1本1本が独立した錯体鎖であり、その物性に興味が持たれている。構造的には、酸素が四配位したCu原子の周りに四つの六員環が対称的に配置した二種類の平板状分子が、静電相互作用によって交互にスタックしたものであり、空気中で安定に存在する。またCu-Cu間の距離はおよそ3.61Åである。本研究は、Cu一次元鎖(C60H24CuF20O8Cu)について、低温での磁気物性を明らかにすることが目的である。 磁化率の温度依存性は2Kまで異常はなく、最低温を除いてほぼキュリーワイス則に従う。ワイス温度は0.8(1)K程度であることがわかった。よって本系はスピン間に弱い反強磁性相互作用が働いていることになる。 次に1H核のNMR緩和率の結果について、高温での測定から、超微細結合は異方成分(Aan = 60 Oe)が支配的であり、Cu原子の磁性を良くプローブ出来ることが分かっている。縦緩和率は温度のべき乗に従って低温で減少しており、磁場を上げると緩和率の絶対値は小さくなるものの、べき指数の値(0.4)は測定磁場1~2Tの範囲で変わらない。これがラッティンジャー液体による振る舞いであるとするとより低温で再び上昇するはずである。今後、広範囲での温度域で測定を行い、本系の基底状態を明らかにして行く。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単鎖試料について、磁化率とNMRスペクトル、緩和率の温度依存性の測定を終えている。反強磁性相互作用が1K以下と極めて小さいことが明らかになった。また、NMRは適度な超微細相互作用を有し、磁性プローブとし良く機能することが確かめられた。 次のステップとしての2足、3足試料については前者は既に合成に成功し、現在、磁化測定の準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2足、3足試料についての磁化測定を行い、反強磁性相互作用の大きさを見積もり、また基底状態の磁性をNMRとともに明らかにして行く。 一方、ミュオンラベリング電子法によって、鎖上を動く電子拡散が存在するかどうかを調べ、本系の伝導性について議論することも検討中である。
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Causes of Carryover |
大型の備品代金に端数が生じたため,残額が残ることとなった。次年度は、液体ヘリウムが申請時に比べて大幅に値上がりしているため、その埋め合わせに利用する。
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