2019 Fiscal Year Research-status Report
強相関電子系における自己学習連続時間量子モンテカルロ法の確立
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18K03552
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
永井 佑紀 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 副主任研究員 (20587026)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 機械学習 / 自己学習モンテカルロ法 / 強相関電子系 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、自己学習モンテカルロ法(マルコフ連鎖モンテカルロ法における次配位の提案を機械学習によって構築した有効模型によるモンテカルロ法で構築する方法)について研究を行なっている。これまではアンダーソン模型などの基本的な電子模型について研究を行なってきていたが、本年度は、対象を広げ、第一原理計算、つまり密度汎関数理論によって計算された多体の電子系への適用を試みた。第一原理計算で得られるエネルギーを原子位置座標で微分することで原子間の力を求めることができる。第一原理計算で得られるエネルギーをニューラルネットワークを用いて模倣する機械学習分子動力学法という手法がこれまで開発されてきていた。しかしながら、作られた有効模型の精度に依存してシミュレーションの精度が変化するという欠点があった。そして、作成するニューラルネットワークをどのように学習することで訓練するか、という問題が非自明であった。何故ならば、ハバード模型などの格子模型とは異なり、原子の座標は連続的であり、訓練すべき原子の配位は無限に存在するからである。このような状況の時に、精度の良いニューラルネットワークをどう作るのか、という問題が存在していた。 本年度は、自己学習モンテカルロ法のアイディアをこの機械学習分子動力学法へと取り入れることで、第一原理計算精度が保証されたシミュレーションである、自己学習ハイブリッドモンテカルロ法を開発することができた。現在論文投稿中である。また、昨年度より引き続き開発していた、電子の持つ性質を利用し巧妙に構築したニューラルネットワークを用いた有効模型の自動構築に関する論文は、無事出版された。 その他、スパースモデリング手法を用いた強相関電子系の計算手法開発の論文を投稿している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では強相関電子系のスタンダードな系であるハバード模型に対する自己学習モンテカルロ法を開発する予定であったが、密度汎関数理論を用いて多電子系を扱う第一原理計算手法に対して自己学習モンテカルロ法を適用するアイディアを思いつくことができた。これにより、局所密度近似を超えたバンド計算などに対してニューラルネットワークを構築し高精度なシミュレーションが可能となった。これは、本研究で対象としている自己学習モンテカルロ法の可能性を大きく広げたものであり、進展は著しいと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、自己学習ハイブリッドモンテカルロ法という、第一原理分子動力学シミュレーションに対する自己学習モンテカルロ法を開発した。この手法は非常に広範囲な応用先が考えられるため、引き続き研究を進めていく。また、電子系の自己学習モンテカルロ法に関しては、スピングラス系などのランダムネスが重要となる系においても同様に有効模型が構築できるのか、という問題に着目することで、どのような時に良い有効模型を作成できるか、について調べていく予定である。
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Causes of Carryover |
カナダアメリカ出張において、カナダ滞在時の宿泊費用を先方(カナダアルバータ大学)に負担していただいたため、当初の予定よりも使用額が少なくなった。次年度は最終年度であるために積極的な成果発表を行うために海外の研究会あるいは国際会議に参加することを計画している。
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