2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K03555
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
菱田 真史 筑波大学, 数理物質系, 助教 (70519058)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 良 九州大学, 理学研究院, 准教授 (60363347)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | コロイド / 電気二重層斥力 / DLVO理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請者らは、電解質溶液中で積層した荷電二重膜において、電気二重層相互作用がGouy-ChapmanやDebye-Huckelが100年ほど前に提唱したのとは全く異なる機序で働くことを発見した(M. Hishida et al., Phys. Rev. E, 2017)。しかし、過去の理論の問題点や新しい理論の適用可能範囲などはいまだ不明確である。電気二重層相互作用はソフトマター間の相互作用でも最も重要なものの一つであり、コロイド化学や生物学などにも広く関係するため、その起源の精査は必要不可欠かつ急務の課題である。そこで、本研究では本成果に立脚し、電気二重層相互作用の起源をあらためて問い質し、新たな理論体系を構築することを目指して研究を行っている。 2019年度は、まず球状コロイドを用いた平衡のコロイド間距離の測定を継続して行った。実験はX線小角散乱を高エネルギー加速器研究機構のPhoton Factoryで行った。昨年度までと同様に構造因子を算出し、平衡コロイド間距離を求めた。本年度はコロイド自体の濃度がコロイド間距離に与える影響を調べた。その結果、溶液中のイオン強度が同じでもコロイド濃度が変わればコロイド間距離が異なることが明らかになった。このことは、DLVO理論がコロイド凝集系には適用できないことを示しており、系全体の熱力学を考えなければいけないという我々のこれまでの主張を裏付けるものである。今後はこの実験結果をもとに、過去の理論を統合するような新たな理論の構築に励む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イオンの価数だけでなく、コロイド濃度依存性についても我々の新しいモデルのほうが妥当であることを示唆しており、モデルの妥当性、および普遍性を考えるうえで重要な結果が得られた。研究が計画通り進んでいるといえる。今後も計画通り、計算機実験との比較や理論的な考察など行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、研究計画通りに研究が進んだ。そのため、今後もこれまでの計画通りに研究を進めていく。今後は特に、計算機実験の結果と実験結果との比較、およびより普遍性の高い理論の構築に力を入れて研究を行う。計算機実験でコロイドの濃度依存性について調べられないかについても検討していく。理論構築では、過去の理論と我々のモデルの齟齬を調べることから始める。具体的にはDLVO理論とGibbs-Donnan平衡との関係性を調べる。
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Causes of Carryover |
年度末に予定していた学会が新型コロナウイルスの影響で中止となり、旅費として予定していた予算が残ったため。
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Research Products
(26 results)