2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K03558
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 哲也 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 特任准教授 (40610027)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | コヒーシン / ループ押し出し / DNA / ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子ダイナミクスの一番シンプルなモデルであるラウスモデルを拡張し、DNAがコヒーシンのループ押し出しによって一定のレートで押し出されるときのDNAの形状ダイナミクスをグリーン関数を用いて解析した。この解析によって、相分離ドメイン(転写装置凝集体)界面付近のDNAは、界面から離れたところにあるDNAと非常にことなるダイナミクスを示すことを明らかにした。界面付近のDNAの場合には、エンハンサの部分が界面に束縛されているので、ループ押し出しで発生した張力がもう一方の先端に伝わるまで(ラウス時間まで)界面付近のDNAが縮まないのに対して、界面から離れたDNAの場合には、ループ押し出しによって発生した張力がコヒーシンがついているDNAセグメント自体を動かすので、押し出しと同期してDNAが縮むためである。また、相分離ドメイン界面付近のDNAがループ押し出しされることによって、界面付近のDNAセグメントの密度が高くなり、界面と平行に表面圧力を発生することを示した。コヒーシンのロード時間を短くすると、ループ押し出しによって発生する表面圧力が大きくなるという結果を得た。表面圧力は、相分離ドメインの実効的な表面張力を小さくする。相分離ダイナミクスの理論によると、内部圧力(実効的な表面張力に比例)の大きいドメインから内部圧力の小さいドメインに物質移動が起こる。従って、本理論から、ループ押し出しを止めると相分離ドメインは小さくなると考えられるが、この予言は、コヒーシンを染色体から取り外すとスーパーエンハンサの間の接触頻度が小さくなるというRaoらの実験(Rao et al., Cell, 2017)とコンシステントである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNAをラウスモデルで扱い、ループ押し出しが起こった時のDNAの運動を解析することができた。また、溶液中と界面でDNAの運動が非常に異なるという知見を見出すことができた。ループ押し出しが相分離ドメインの成長ダイナミクスに与える影響の解析もすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
染色体をABブロック共重合体として扱う。本年度構築した理論を拡張して、ループ押し出しが染色体の構造因子に与える影響を解析し、ループ押し出しがミクロ相分離構造にどのような影響を与えるかということを明らかにする計画である。
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Causes of Carryover |
所属機関の変更に伴い、出張計画にも変更が生じたため。また、2020年2-3月にCOVID-19の影響で国際会議・シンポジウムがキャンセルとなってしまった。次年度は、実現できなかった共同研究先への旅費・滞在費及び、研究成果発表のための旅費として未使用額を執行する予定である。
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Research Products
(5 results)