2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K03561
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
宮崎 淳 和歌山大学, システム工学部, 講師 (50467502)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光熱変換顕微鏡 / 生細胞イメージング / ミトコンドリア / ミクロ熱物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱は細胞にとって最も重要な物理量の一つであり,細胞が示す多様な機能と密接な関係がある.近年,細胞内というこれまで測定の対象とならなかった微小な空間での温度分布が温度感受性の蛍光分子により測定できるようになり,古典的な熱力学からは説明のつかない細胞内の温度分布の存在が複数のグループによって見出された.これらの研究は,その物理的機構の解明の必要性とともに,細胞スケールの生命システムおいて温度・熱とは何かをという問題を改めて提起した.細胞の熱と機能との関係,及び細胞内の温度不均一の原因について理解するには,温度に加えて熱の伝わりやすさである熱拡散率の測定が重要である。本研究では、光熱変換顕微法による熱拡散計測法と、温度計測法との2つを統合させ,細胞スケールでの統合的熱物性解析を行うことを目的とした. これまでの経過において, 細胞内で熱の生成に主要な役割をはたしているミトコンドリアを,光熱変換顕微鏡により無標識で高感度・高空間分解でイメージングするための新規光学系および低雑音光検出器を製作した.それによりショット雑音限界の高感度で1フレーム数秒程度で生細胞中のミトコンドリアを観察することができるようになった.一方で,光熱顕微鏡によりミトコンドリアとは異なる細胞内器官も観察された.蛍光標識を利用したイメージングから,新たに観測された器官はリソソームであることが分かった.またミトコンドリア近傍の熱拡散率を計測するため、2チャンネルロックイン増幅器を用いた予備的な計測を行い、同時多周波数計測法による熱拡散率マッピングの実現可能性および問題点を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの経過において、新規光学系および低雑音光検出器の製作により、生細胞内のミトコンドリアを高感度・高速に無標識イメージングできるようになった。一方で,光熱顕微鏡によりミトコンドリアとは異なる細胞内器官も観察できることが分かった。蛍光標識を用いたイメージングからこの器官がリソソームであることが確認されるなどの新発見もあり、目標実現にむけて計画はおおむね順調のに進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
同時多周波数計測法による熱拡散率マッピングの実現に向けて、測定信号に含まれる偽信号の除去するため光検出器の改良に取り組む。その後、ミトコンドリア近傍の熱拡散マッピングを行い、温度計測法との2つを統合させ,細胞スケールでの統合的熱物性解析を行う。
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Causes of Carryover |
計画では熱拡散率マッピングに向けてロックイン増幅器を8台製作する予定であったが、ミトコンドリアの無標識イメージングの高感度化を優先するため、本年度はロックイン増幅器の製作を行なわず、新規光学系と低雑音光検出器の製作に注力したたため次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した助成金は低雑音光検出器の改良のための部品購入費、国際会議への旅費、論文投稿費として用いる予定である。
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Research Products
(5 results)