2018 Fiscal Year Research-status Report
Electric double layer at high ionic concentrations
Project/Area Number |
18K03563
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
名嘉山 祥也 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10422982)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 電気二重層 / 電解質溶液 / 界面動電現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
強い外電場における電気泳動の非線型応答について検討した。非線型電気泳動は水溶液系のみならず、特に低誘電率の有機溶媒系などにおける微粒子の運動において重要になる界面動電現象である。従来の電気泳動の理解は比較的低い電場で起こる線型応答の範囲にとどまっていた。実験が先行している非線型電気泳動の機序について明らかにするために、イオン分布と流れのダイナミクスを著者らの開発したSmoothed Profile 法による直接数値計算をもちいてダイナミクスを検討した。外場の強さの増加とともに、電気泳動易動度は一定である線型応答の領域から増加に転じ、さらに強い外場で飽和することが再現された。非線型応答領域では、強い外場によって電気二重層の非対称性が強くなり、これは泳動速度を減少させる電場を発生させる。一方、電気泳動易動度の増加する領域では、電気二重層における対イオンが徐々に剥離され、イオンによる抵抗が減少することによって、電気泳動易動度が増加することを明らかにした。これは見かけ上、微粒子の有効電荷が増加したようにみえる。さらに強い電場では、電気二重層の非対称性が極大になり、その結果流れの前後対称性が崩れ、電気泳動易動度が飽和することがわかった。従来は、強い電場によって電気二重層のイオンが完全に剥離すると考えられていたが、電気泳動易動度の飽和領域でも対イオンは完全に剥離せず、電気二重層の非対称性が重要であることがわかった。以上のように、定性的に異なる 2 つの非線型応答は,電気二重層と流れの複雑な相互作用によることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画の一部を行い、査読あり研究論文3報を学術誌に発表した。また招待講演2件を含む17件の学会発表を行い、図書の分担執筆を1件おこなっており、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
界面動電現象である非線型電気泳動について、塩添加の効果について明らかにする。対イオンと共イオンは反対符号であるため、外場に対する応答がことなる。このこと外場が強くなるほど顕著になる。また、溶媒とイオンの相互作用による溶媒和を考慮して,微粒子の電気泳動に与える効果を明らかにする. 高電解質濃度における電気浸透流について検討する.高電解質濃度における電気二重層の遮蔽長では,空間的な広がりとともに電場と流れの結合を担うイオンの量も増えるため,駆動効率の増大が期待される.電気二重層の構造とスケール変化による電気浸透流の質的な変化の効果は,とくにナノ流路において重要となる.本課題では,高電解質濃度における流れの理解に立脚して電気浸透流・流動電流を高効率にする電解質濃度と流路サイズの設計の物理的な原理を提案する.
|
Causes of Carryover |
当初予定していた計算機を翌年度に購入することとしたため。翌年度の助成金と合わせて計算機導入を検討する。
|