2019 Fiscal Year Research-status Report
波動との相互作用によるイオンダイナミクスの複雑性の解明
Project/Area Number |
18K03574
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
池添 竜也 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (70582849)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 波動粒子相互作用 / 複雑性 / 波動 / イオンダイナミクス / 時系列データ解析 / ミラー捕捉 / Jensen-Shannon複雑性 / 順列エントロピー |
Outline of Annual Research Achievements |
高温磁化プラズマにおける複雑性を決める素過程の理解を目指し、ミラー磁場閉じ込め高温プラズマ実験装置の特徴に着目して研究を進めた。これまでに他の実験装置において行われた磁化プラズマの複雑性についての研究では、扱われる信号が衝突過程に支配された電子系の情報を強く含んでおり、実験的に何かをアクチュエータとして複雑性の因果関係を調べるようなことは難しく、装置毎の複雑性の大まかな分類にとどまっていた。一方、本研究では、無衝突領域にまで加熱したイオン群をミラー磁場に捕捉し、波動との相互作用を通して磁力線方向に輸送されたイオン流を高時間分解能のイオン検出器により直接計測することにより、波動の情報を強く含むイオンの時系列データの取得に成功した。 高エネルギーイオン束のみを高時間分解能で測定した場合、加熱に用いている波動とは別のイオンサイクロトロン周波数帯のアルベン波(AIC波動)が励起された際に、Jensen-Shannon複雑性が顕著に上昇することが見いだされた。その他の信号、例えば閉じ込め領域周辺部の静電プローブで測定したイオン飽和電流の時系列データの複雑性は、AIC波動の励起前後でほとんど変化しておらず、AIC波動の出現とバルクプラズマの複雑性の相関は強くない。この結果は、Jensen-Shannon複雑性という代表的な複雑性指標が、波動によるイオンのピッチ角散乱過程に対して感度があることを実験的に初めて示すと共に、ミラー捕捉された高エネルギーイオンのダイナミクスは波動との相互作用に支配されていることを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大型ミラープラズマ閉じ込め実験装置を用いた限られた実験機会において、複雑性の顕著な変化を示す実験データを得ることができ、構想にあるイオン検出法が複雑性研究に有用であることが確認され、今後の研究指針が明確になり、おおむね予定通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
イオンダイナミクスの複雑性に対する波動の寄与が明確になったことから、予定通り、外部励起波動をアクチュエータとした能動的実験により、その寄与のプロセスをさらに調べる。また、時系列データ解析の高度化も進める。
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