2019 Fiscal Year Research-status Report
陽電子消滅分光法を用いた金属中の格子欠陥に捕獲された水素の非破壊定量評価
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18K03584
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
佐藤 紘一 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (30378971)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
畠山 賢彦 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 准教授 (30375109)
徐 ぎゅう 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (90273531)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 格子欠陥 / 水素 / 金属 / 陽電子消滅 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は陽電子消滅分光法を用いた金属材料中の水素が捕獲されるサイトと量を非破壊で検出する実験手法を確立することを目的として、(1)水素捕獲前後における空孔型欠陥の陽電子寿命値の変化の実験による取得、(2)上記の寿命値の変化のシミュレーションによる取得、(3)透過型電子顕微鏡観察による欠陥検出と昇温脱離ガス分析による水素捕獲サイトとその量の取得を実施する。 本年度は以下のような成果を得ることができた。①電子線照射したタングステンに100MPa、5.8MPa、1MPa、0.1MPaで水素チャージを実施した。電子線照射で形成した原子空孔が水素を捕獲することによって変化する陽電子寿命値を得た。水素チャージ圧力が高くなると固溶水素濃度が上がるため、原子空孔が捕獲する水素数も増加すると予想したが、予想通りの結果は得られなかった。水素チャージの圧力が0.1MPaと100MPaにおいては、100MPaの方が捕獲水素数が多かったが、5.8MPaと1MPaの違いは明確には得られなかった。この結果が得られた原因を今後追及する。②電子線照射した低放射化フェライト鋼F82Hに電解水素チャージを行ったところ、照射によって形成した原子空孔集合体に水素が捕獲された。詳細な解析を行ったところ、陽電子寿命値が最大で45ps程度短くなり、原子空孔が5個程度から成る空孔集合体に8個程度の水素が捕獲されることが分かった。③タングステン中に形成する原子空孔が不純物である炭素と複合体を形成する場合を考慮した陽電子消滅寿命シミュレーションを実施した。④昇温脱離ガス分析中の材料中の水素の拡散・放出挙動のシミュレーションを実施し、シミュレーションと実験を比較することで水素の捕獲サイトを同定することができた。透過型電子顕微鏡観察は実施できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要の冒頭で記述した(1)については、電子線照射したタングステンにおいて原子空孔に捕獲される水素数の水素チャージ圧力依存性を調べることができた。また、低放射化フェライト鋼F82Hの空孔集合体に捕獲される水素数の変化も得ることができた。(2)についても、鉄中の原子空孔集合体が水素原子を捕獲した際の陽電子寿命値の変化や、タングステン中の原子空孔-炭素複合体に対する水素の捕獲に関するシミュレーションを実施することができた。(3)についても、透過型電子顕微鏡観察は当初の予定に比べて遅れているが、昇温脱離ガス分析の実験とシミュレーションの比較から、水素の捕獲サイトを予想することができるようになった。以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、下記の点に注目して研究を進める。 ①高圧水素チャージの圧力の違いによって空孔型欠陥へ捕獲される水素数が変われば、陽電子寿命値が変化する。今年度は電子線照射したタングステンに対して、その実験を行うことができたが、今後は純鉄と低放射化フェライト鋼F82Hに対しても上記の影響を調べる。 ②上記①の結果において、理論的な解析と実験が一致していない状況である。その原因を探るべく、水素チャージ終了後の試料の取り扱いを工夫することで、理論と実験が一致していない理由を探る。 ③継続して、昇温脱離ガス分析を行うと同時に、透過型電子顕微鏡による組織観察を実施する。
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Causes of Carryover |
富山大学には透過型電子顕微鏡実験と成果報告で予算を計上していた。成果報告が少なかったことが主な原因であると考えるため、国内外の学会発表や論文投稿料など使用し、外部へのアピールを強化していく予定である。
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Research Products
(5 results)