2019 Fiscal Year Research-status Report
燃焼プラズマ研究に向けた高エネルギー粒子物理と熱化粒子物理の統合
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18K03587
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
西村 伸 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (60311205)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 磁場閉じ込め核融合 / 非対称トーラス配位 / 燃焼およびNBI加熱プラズマ / 高速イオン / 新古典輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度実施報告に述べたとおり、この初年度は課題採択直前時期に発表した接線NBI(中性粒子ビーム入射)における高速イオン速度分布のLegendreオーダー一次(運動量入力)と二次(圧力非等方性)に関する論文の理論とそれ以前から核融合研で高エネルギー粒子関係の諸検討に用いられていた5次元シミュレーションコードとのベンチマークテストから開始した。しかし初年度時点のこの計算にはまだいくつかのミス、バグが含まれており、その修正に二年度目前半までの期間を要した。問題を解決した結果は第22回国際ステラレータ/ヘリオトロンワークショップ(2019.9.23-27,米国ウィスコンシン大学, poster No.46)に報告する事が出来た。この過程でこの種の既存コードや理論でCoulomb対数の取扱いが統一されていない事も問題となったが、その最適化についてもその後検討を進めている。これは衝突速度に依存するCoulomb対数を持つ本来のLandau衝突項を用いた運動論的方程式の解の性質を調べる物である。また、課題採択直前の発表理論の一つである随伴方程式法については高速イオンソース項が周回軌道のピッチ角領域にある場合だけ解を示していたが、捕捉ピッチ角までソース項が広がった場合への拡張の検討も進めている。これは従来周回ピッチ角に対して計算していた磁気面平均ピッチ角散乱衝突項の固有関数という概念を捕捉ピッチ角のバウンス積分ピッチ角散乱項に拡張する物である。9月の米国の学会参加に加え、春の国内学会でもこれらその後の検討を報告する予定であったが、新型コロナウィルス感染防止のために中止となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
接線NBIにおける高速イオンの非両極性径方向輸送と燃焼プラズマにおける核融合生成高速イオンの磁力線方向自発流については当初から基本的アイデアはあり、本研究計画申請時に一課題として含めた物であるが、あまり一般的トーラス配位を対象として論文化しても意味が無い問題もあった。まず従来型ステラレータ/ヘリオトロン配置では熱化粒子の非両極性粒子束が大きく、それに比べて高速イオン寄与は重要では無いと思われるであろう事があった。核融合生成高速イオンについては、この理論がほぼ等方な速度分布を仮定しているけれども従来型配位ではその仮定が正しく無い事を示唆するシミュレーション結果が過去に公表されている他、トロイダル対称性を大きく崩した配位ではこのような機構による自発電流があまり重視されて来なかった歴史経緯もあった。そこで近年いくつかの研究機関(ドイツマックスプランク研究所、中国西南交通大学)で配位最適化が進められている準軸対称配位をまず主対象としてこの理論を説明する論文化を行う事とし、かつて核融合研で設計された準軸対称配位であるCHS-qaを具体的磁場配位例として使ったシミュレーションを開始した。今後の進め方に関するこの方針決定がこの時期になった事からやや遅れていると判断される。 また本研究計画申請時に想定していなかった事として、2020年3月から3ヶ月ほど核融合研スーパーコンピュータの機種更新作業期間があり、それが新型コロナウイルス緊急事態宣言のため更に遅延し、本報告書執筆時点でも運用再開されていない。これまでに同計算機で使っていたプログラムをパソコンに移植して対応しているが、このためのプログラム書き換えにも時間を取られ、計算時間を要する検討には対応しきれない問題もある。
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Strategy for Future Research Activity |
2019度後半から開始した準軸対称配位の検討については2020年度前半の国際会議に発表を申し込んでおり、2020年度科研費(基金)支払い請求にもこの種の会議の旅費・参加費を計上していたが、その後これら会議の一年延期が決定されつつあり、2予算を当初見込み通りには使用できない事が明らかとなった。このため2020年度は国外研究者との意見・情報交換よりも、これまでにできている事の論文化を優先させ、2020年度末に助成期間延長を申請して最終的な全体取りまとめの会議発表、論文発表に当てる。2020年度中に論文化を行うテーマは上記のとおりの二年度目の経緯を受けて次の物となる。 (1) NBI加熱および燃焼プラズマにおける高速イオンと熱化粒子の衝突に用いるCoulomb対数 (2) 2018年発表のNBI高速イオン速度分布非等方性の計算理論を捕捉ピッチ角まで広がった高速イオンソース項まで扱えるように拡張 (3) 準軸対称配位を主対象としてNBI高速イオンの非両極性輸送と燃焼プラズマ核融合生成高速イオンの磁力線方向自発流の理論と計算実施例
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Causes of Carryover |
2019年度予算は第22回国際ステラレータ/ヘリオトロンワークショップと国内学会(プラズマ核融合学会か日本物理学会)への参加費と旅費を主たる出費と想定して支払い請求を行った。この国外旅費は過去の国際会議参加時の経験から算定していたが、今回は早期段階から出席を決めていたため航空機予約、宿泊予約を二ヶ月以上前に行ったところ想定外に低額の旅費で済んだ。これに加えて春には日本物理学会年会が中止になった。これらの理由で発生した次年度使用\120,942を加えた2020年度予算は、欧州物理学会や米国物理学会の会合に出席するとともに併せて欧州、米国の研究機関を共同研究打ち合わせで訪問すれば使用しきれるとの見込みで支払い請求手続きを行った。しかしその後、新型コロナウィルス感染拡大でこの種の会合の中止や一年延期が決定されつつあり、2020年度中に使用しきれる見通しが立たなくなった。このため現在所属機関担当部署と相談している今後の使用計画は、最終年度である2020年度の終わりに基金の助成期間延長を申請する手順である。2020年度よりも2021年度に主に使用する事になる。
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