2020 Fiscal Year Research-status Report
イメージング分光計測に基づく水素ペレット溶発雲内部構造と粒子供給空間分布の研究
Project/Area Number |
18K03588
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
後藤 基志 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (00290916)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 水素ペレット / 分光計測 / シュタルク広がり / 局所熱平衡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、核融合プラズマに入射した水素ペレット溶発雲の発光に対して分光計測を行い、得られたスペクトルの解析から、溶発雲内部の電子温度、電子密度等のプラズマパラメータを導出し、それらの空間分布から磁力線方向の粒子拡散レートを評価することで、プラズマへの粒子供給空間分布を求めることを目的としている。当初はプラズマ中心部を観測するような視野で計測を行なった。しかしながら、多くの場合ペレットはプラズマ周辺部で完全に溶発を終了し、プラズマ中心部に到達しないことが明らかとなった。したがって、空間分解能は低下するが、ペレットがプラズマへ侵入した直後の溶発雲が観測できるような視野を持つ観測ポートの選定と光学機器の設計を行なった。2020年度に機器製作と計測を行う予定であったが、製作に予想以上の時間を要し、LHDの真空容器内作業終了に間に合わなかったため、2020年度の計測は断念し、これまでに取得した計測データに対して新たな解析を試みた。これまでは、溶発雲内では局所熱平衡が成立していると仮定し、スペクトル形状は電子密度および電子温度のみに依存するモデル計算での解析を行なってきたが、基底状態が局所熱平衡に達していない可能性があるため、基底状態密度をフィッティングパラメータとし、モデル計算の自由度を増加させた。基底状態密度が局所熱平衡よりも小さい場合、電子が原子に付着し負イオンを生成する輻射付着過程に伴う連続光強度が低下するため、より低い電子温度が解として可能となる。実際に、これまで得られていた1 eV程度よりも低い0.5 eV程度の電子温度が解として得られるようになり、スペクトル形状もより精密に再現できるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
光学機器製作に時間がかかり、真空容器内作業終了日までに観測ポートの交換ができなかったため、2020年度は計測を断念したが、必要な機器の製作および改造はすぐに始められる状況にあり、2021年度の実験でのデータ取得を目指す。シミュレーションモデルの自由度が高くなり、より精密なフィッティングを行うことができるようになったため、溶発雲内部の空間構造についてより詳細に求められると期待している。局所熱平衡を仮定していたときに問題となった、不自然な電子温度分布が改善されることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の最終年度である2021年度の実験では、10月の実験開始より直ちにデータ収集を行い、同時にデータ解析も開始する。具体的には、スペクトルの解析から溶発雲内の電子温度および電子密度の分布を求め、それらの情報を用いて磁力線方向に拡散する粒子フラックスを評価する。このような解析をさまざまな放電条件(磁場配位、磁場強度、加熱パワー)において得られたスペクトルに対して行い、プラズマへの粒子供給空間分布の放電条件に対する特性の違いを明らかにする。また、連続してペレットを入射する場合、入射の度に背景プラズマの条件が非連続的に変化し、ペレットの進入長および溶発雲内のプラズマパラメータが影響を受けると考えられる。そのような連続的なペレット入射が粒子供給分布および効率にどのような影響を与えるかという点についても主要な研究対象とする。
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Causes of Carryover |
観測ポートの光学機器製作に時間がかかり、2020年度の実験における計測を行うことができなかった。必要な観測ポートの改造は2020年度末まで続く実験期間を待つ必要があり、2021年度に行わざるを得なくなった。また、2020年度に予定されていた学会、研究会が軒並み中止または延期となったため、それらに予定していた旅費等の執行は2021年度に行う予定である。
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