2018 Fiscal Year Research-status Report
大電力パルススパッタリングにおけるイオン化反応過程の解明
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18K03602
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
太田 貴之 名城大学, 理工学部, 教授 (10379612)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スパッタリング / ダイヤモンドライクカーボン / イオン化 / イオンエネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,炭素ターゲットを固体材料として用いた大電力パルススパッタリングにおいて,プラズマ中の炭素原子,炭素イオン,アルゴンイオン等の数密度とエネルギー分布の測定を行い、イオン化反応過程を明らかにすること、及びダイヤモンドライクカーボン膜の膜質を評価し気相との相関を明らかにすることが目的である。 本年度は、エネルギーアナライザ付き質量分析装置を用いて、大電力パルススパッタリング中の炭素イオンとアルゴンイオンのエネルギー分布の測定を行った。その結果、スパッタ粒子である炭素イオンは、気相中でイオン化して生成されるために1つの温度成分からなるマックスウェル分布を示した。一方アルゴンイオンは、アルゴン原子の電子衝突電離による低温度成分と、アルゴン原子と炭素イオンとの電荷交換によって生成される高温度成分を併せ持つマックスウェル分布を示した。また、電源電圧が増加するにつれて、炭素イオンは各エネルギーのイオンが満遍なく増加したが、アルコンイオンは、高温度成分がある印可電力以上で急激に増加することが明らかになり、イオン生成過程の違いが要因であることが示唆された。ダイヤモンドライクカーボン膜の膜質を評価したところ、電源電圧の増加に伴って、膜硬度は増加し、sp3成分が増加したことが示唆される。また、摩擦係数は、減少させることに成功した。気相診断の結果より、数十eVのエネルギーを持つイオンが増加して、膜表面の平滑化が起こったことも要因と考えられる。 大電力パルススパッタリングにおけるスパッタ原子とガス原子のイオン生成過程の違いと、プラズマ中のイオンの振る舞いと膜質の変化との関係を実験によって明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の計画は以下の3項目であり、それぞれの評価を述べる。 ①時間分解質量分析によるイオン種の同定とイオンエネルギー分布計測(平成30-31 年度)エネルギーアナライザ付質量分析器により、時間平均測定下における、HiPIMSで生成されたイオン種の同定と,イオンエネルギー分布測定を行イオンの振る舞いを調査した。また,電気的計測により、膜に入射するイオン量を測定した。 ②真空紫外吸収分光法を用いた炭素原子の数密度測定(平成30-31 年度)マイクロホローカソードプラズマを光源とした真空紫外吸収分光法による炭素原子数密度測定の光学系の構築が終了した。 ③紫外吸収分光法を用いた炭素イオンの数密度及び並進温度測定(平成30-31 年度)波長可変紫外半導体レーザを光源とした紫外吸収分光法による炭素イオン数密度及び並進温度測定の光学系の構築が終了した。 また、当初、平成31年度の計画であった⑤DLC 膜の形成とその評価(平成31-32 年度)を前倒しで実験を進め、ラマン分光やXPSを用いた膜中のsp3/sp2比などの膜構造解析と、ボールオンディスク装置による摩擦係数、膜硬度を測定した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画に沿って、吸収分光を用いた炭素原子および炭素イオンの数密度測定をすすめる。また、イオン種の時間分解質量分析をすすめる。
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Causes of Carryover |
端数が残額となった。翌年度分と合わせて執行予定である。
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