2019 Fiscal Year Research-status Report
Nucleon structure from lattice QCD
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18K03605
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 勝一 東北大学, 理学研究科, 准教授 (60332590)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ハドロン / 量子色力学 / 格子ゲージ理論 / 核子構造 / 陽子サイズのパズル / 中性子寿命のパズル / 陽子スピンのパズル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では核子の構造に関連した研究を縮退した軽いアップ・ダウンクォークと、それらよりも重いストレンジクォークの真空偏極を取り入れた、2+1フレーバー格子QCD計算により行なっている。これまでPACS Collaborationの下、スパコンOakforest-PACSを用いて生成されたゲージ配位(PACS10配位)を利用した格子QCD計算において中性子β崩壊を特徴付ける核子軸性電荷g_Aに対して、統計精度1-2%での評価が可能となった。中性子β崩壊は、クォークの素過程レベルではベクトル(V)型と軸性ベクトル型(A)の差V-A型の結合によって引き起こされるが、当該年度では、通常のβ崩壊では現れない、標準理論を超えた新物理の探求に有効とされる、「非V-A型」の中性子崩壊としてスカラー(S)型とテンソル(T)型の崩壊に着目して研究を行なった。非V-A型の崩壊過程はV-A型のようなアイソスピン対称性やカイラル対称性に相当する対称性がないため、強い相互作用の量子補正の影響を強く受ける可能性がある。その量子補正の強さを表すのが、核子スカラー荷g_Sと核子テンソル荷g_Tという核子構造を反映した物理量で、それ自体実験で直接測定することは困難な物理量である。格子上のカレント演算子の繰り込み係数を格子QCD計算で非摂動的に別途評価の上、物理点直上で、かつ一辺が差し渡し10 fmを超える巨大な空間体積で生成されたPACS10配位を用いて繰り込まれた核子スカラー荷g_Sと核子テンソル荷g_Tを第一原理計算として理論的に評価した。これらを使い実験の制限から強い相互作用の量子補正を取り除き、標準理論を超えた新物理に対する直接的な制限も評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度も、前年度に引き続き、PACS Collaborationにより生成されたPACS10配位を利用した核子構造に関する研究の一環として、標準理論を超える新物理の探索に有効と思われる、核子スカラー荷と核子テンソル荷という新たな物理量について研究を展開することができた。さらに、PACS Collaborationにより、これまでの格子間隔(0.08 fm)と異なる格子間隔(0.06 fm)の新しいゲージ配位の提供があり、次年度以降に行う予定の大規模格子QCD計算の準備を整えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた核子構造に関する格子QCD計算の結果を吟味し、実験で指摘されている4%程度の核子の大きさに関する問題に取り組むには統計誤差の抑制のみならず、これまで評価できていない理論の格子化による系統誤差を評価する必要があると判断した。そのため、新しくPACS Collaborationにより生成された異なる格子間隔のゲージ配位を用いた、新たな格子QCD計算を実施する必要がある。
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Research Products
(5 results)