2021 Fiscal Year Research-status Report
Nucleon structure from lattice QCD
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18K03605
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 勝一 東北大学, 理学研究科, 准教授 (60332590)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ハドロン / 量子色力学 / 格子ゲージ理論 / 核子構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では核子の構造を特徴づける物理量に対する理論計算を縮退した軽いアップ・ダウンクォークと、それらよりも重いストレンジクォークの真空偏極を取り入れた、2+1フレーバー格子QCD計算により行なっている。近年、格子QCD計算のコミュニティでは、コミュニティ外の研究者に向けて、格子QCD計算の結果をレビューし、幾つかの物理量に対しては、QCD理論に基づく第一原理計算の理論値として各格子QCDグループの結果に対してFLAGと呼ばれる格付けも行われている。その格付けの中では「物理点での評価」、「有限体積効果の除去」と共に、格付け判断の大きな指標として、「有限格子間隔に伴う系統誤差の除去(連続極限の遂行)」がある。本研課題では、格子QCDグループPACSにより生成された「PACS10」と呼ばれるQCDゲージ配位を用いることで、π中間子が実験値135MeVに相当するクォーク質量(物理点での評価)で 1辺が10fmを超える物理体積(有限体積の除去)で数値計算を実行することにより、前者2つに関しては既にクリアできている。昨年度から継続して行ってきた新しい格子間隔(0.06 fm)での数値計算を、当該年度はスパコン富岳の利用によりほぼ完遂することができ、2つの格子間隔(0.08 fmと0.06fm)による計算結果を比較することで、残された3つ目の指標である、理論の格子化による系統誤差の評価を行える段階まで研究が進展した。特に、核子の大きさに関しては、1つ目の格子間隔(0.08 fm)での計算結果によって、格子QCDによる理論値が実験値をかなり過小評価する結果であった理由が、当該年度で得られた2つ目の格子間隔(0.06 fm)での計算によって、それが理論の格子化による系統誤差によるものであることが特定でき、核子の大きさのパズル解決に向けて、連続極限の遂行が必要不可欠であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界的な新型コロナ禍での国際会議のキャンセルに伴い、当初見込んでいたそれら国際会議においての研究成果発表などは計画通りに行えていない。その反面、令和3年度は、HPCI一般利用課題としてスパコン富岳の利用申請が1年間採択され、富岳の利用により、新しい格子間隔(0.06 fm)上での格子QCD数値計算が順調に進み、核子の大きさや中性子β崩壊を特徴付ける核子軸性電荷g_Aを含む5つの核子の静的な性質を反映する物理量について、これまでに計算が完了している格子間隔0.08 fm上の結果と合わせて、連続極限を視野に入れた理論の格子化による系統誤差の評価が行えるところまで研究が進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに、2つの格子間隔(0.08 fmと0.06 fm)上で核子の大きさや中性子β崩壊を特徴付ける核子軸性電荷g_Aを含む5つの核子の静的な性質を反映する物理量についての計算がほぼ完了し、2つの計算結果から残されていた理論の格子化による系統誤差の評価が行える段階になった。最終的な目標である連続極限を行うために、3つ目の格子間隔(0.04 fm)の計算に着手することが必要である。
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Causes of Carryover |
世界的な新型コロナ禍での国際会議のキャンセルや学会、国内研究会のオンライン化に伴い、当初見込んでいたそれら国際会議、研究会、学会への参加費用や旅費及び滞在費の支出がなくなったため。今後、新型コロナ感染状況が改善すれば、国内外の国際会議や研究会の通常開催が行われると予想される。そのため次年度に、再開された対面型の国際会議や研究会への参加のために使用することを計画している。また、新型コロナ感染状況が改善しない場合でも、今後ますますオ ンラインによる研究交流や研究発表の機会が増えるため、そういったオンラインによる研究活動を円滑に行うための環境改善の経費として使用することや、スパ コンの有償利用により研究を促進を行うため、その利用負担金として使用することも考えている。
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