2020 Fiscal Year Research-status Report
トップパートナー粒子の同定に基づくLHCにおける新物理探索
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18K03611
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
竹内 道久 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 准教授 (60749464)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 素粒子現象論 / トップクオーク / ヒッグス / ボトムフレーバー / ボトム湯川結合 / LHCにおける新物理探索 / ジェット / 暗黒物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標の一つは、ヒッグス粒子の性質測定を足がかりに、背後にある素粒子標準模型を超える新物理に迫ることである。特に、トップパートナーが存在するような場合には、第三世代のヒッグス物理に影響が現れると考えられ、ボトム湯川結合にずれが生じたり、ボトムフレーバー測定に見られる標準模型からのずれを説明する可能性、また、グルーオンとヒッグスの相互作用への影響等、が期待される。これらのケースを想定し、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)実験でのデータを最大限活用し、新物理を探る様々な手法の確立を目指す。 2020年度には、標準模型の予言からのずれが報告されているボトムフレーバーの測定B→D(*)lνを説明する模型について、有効理論(EFT)と対応する高エネルギー理論について、LHC実験における感度を試算し、報告されているずれを説明できる程度の質量の新粒子を考える場合、LHC実験のエネルギースケールでは有効理論の近似が悪くなることを指摘した。 ボトム湯川結合定数は、ヒッグスのボトムへの分岐比を用いて主に測定がなされ、符号に関する感度が悪い。我々は、ボトム湯川結合の符号を決定する手法として、bbH生成を利用する方法の研究を行っている。主要な結果は得られている一方、詳細の検討が必要であり、来年度には論文にまとめたい。また、トップパートナーが存在すると、ヒッグスとグルーオンの相互作用もエネルギースケールに応じてずれる。レプトンフレーバーの破れの検証の場として、pe散乱、pμ散乱実験を考えると、グルーオンを入射粒子に持つ ge→gτや、gμ→gτという素過程が重要な寄与を与える。このプロセスを検討しており、これまで得られた結果を近々論文にまとめたいと考えている。 2020年度も、いくつかの国際会議、国内会議において、主にZoomによる招待講演を含む研究発表を行ない、研究成果の発信を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ボトムフレーバーの測定に関する標準模型からのずれのLHC実験における研究に関しては、論文をまとめることができたが、ボトム湯川結合の符号決定に関する研究、レプトンフレーバーの破れの検証に関する研究に関しては、詳細を検討する段階で時間が想定外にかかり、論文発表が年度内に間に合わなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ほぼ、結果の出ている、ボトム湯川結合の符号決定に関する研究、レプトンフレーバーの破れの検証に関する研究を論文としてまずはまとめる。また、トップパートナーと暗黒物質のco-annihilationプロセス等の関係に関する研究についてもまとめたい。ボトムフレーバーの物理をLHC実験において検証する方向の研究に関しても、いくつかのプロジェクトの拡張を進めたい。
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Causes of Carryover |
研究会開催のための招聘旅費や、海外の共同研究者を招聘するための旅費、こちらから海外の共同研究者の研究機関へ出張する旅費等を確保していたが、コロナウイルスの蔓延の影響が続いたことにより、全て計画の延期を余儀なくされた。研究発表にかかる経費についても、多くがZOOMによる発表と今年度はなったため、執行した経費が当初計画よりも少なくなった。
研究成果発表のための出張旅費、学生の研究発表のための旅費の補助、延期していた共同研究者の招聘旅費等に利用する計画である。
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