2019 Fiscal Year Research-status Report
Research on Quantum Gravity by W-operators
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18K03612
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
綿引 芳之 東京工業大学, 理学院, 助教 (40212328)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 量子重力 / W代数 / Jordan代数 / THT膨張 / インフレーション / 編み上げ機構 / Coleman機構 / 弦理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度以降の研究の足場を作るため,2019年度の研究は2018年度の研究を再検証し, 本論文という形でまとめることを主な目的とした。この目的のため,2019年度は2018年度の研究を丁寧に見直し,さらにはこれを精査して論理的な流れを煮詰めた。
具体的には,既に得ていたW★代数の最初の数項を増やし,2018年度では代数の演算子の外線が4個までであったのを2019年度では6個まで拡張した。4個では代数の全体像が分かりにくかったが,6個まで拡張したことで従来知られているW∞代数と似たような構造があることが発見できた。我々の理論に現れる宇宙のTHT膨張は,インフレーション理論と同様,地平線問題と平坦性問題を同時に解決することを確認した。そして,編み上げ機構の理論的な理解を進めた。その副産物として,宇宙誕生時には曲率がゼロのトーラス状の宇宙が造られることを発見した。また,時間誕生の過程が引き起こす相互作用の具体的な形を求め,この性質を調べた。時間誕生の過程を引き起こす相互作用の数学的な構造の理解はまだまだ不十分で,今後の課題にはなるが,どのような相互作用であれば時間誕生が起きるのか,どのように宇宙が終焉するのかなどの問題へのアプローチの方法が得られたことは大きな進展だと確信する。
今年度は研究会に2回ほど出席し,その内の1回は我々の研究成果を発表した。出席した2回の研究会は,いずれも,我々の研究に近い分野の研究会である。ここではたくさんの質疑が出たが,我々の理論に致命的な欠陥は見つからず,今後調べるべきこともハッキリし,手ごたえも十分にあったと感じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年提出した研究実施計画に書かれたこととほぼ同じことが実行できたから。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は,Jordan代数の表現論をさらに詳細に調べ,W★代数の数学的な構造の全容を把握する。これと同時に,この理論に現れる物質場の役割を調べ,宇宙背景輻射場の揺らぎの仕組みを理解する。また,編み上げ機構とColeman機構後に現れる物質場の性質も調べる。これらの問題については,高次元化によって得られる時空の次元が弦理論や膜理論の時空の次元と一致するという事実を手掛かりにする。2021年度は本研究の大まかな目標に到達し,2022年度以降はさらなる理解に達成することを期待している。もちろん,うまくゆかないことがあったり,新たな問題に直面することがあるかもしれないが,W★演算子による量子重力理論自体は,超弦理論と並び立つ統一理論の候補になるのではなく,超弦理論を補完する理論であり,非常によくできた理論であることは間違いないので,それなりの大きな成果は見込めると信じている。事実,宇宙の加速膨張の理論的な説明はその一例である。臨界次元を持たない超弦理論の研究も同時に行う必要があると思われるが,これについては既に理論的な道具立てが1980年代以来の超弦理論の研究により完成しており,この方面に特有の困難はないと思われる。
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Causes of Carryover |
2020年度に購入するパソコンの周辺機器の物品費に充てる。
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