2021 Fiscal Year Research-status Report
Research on Quantum Gravity by W-operators
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18K03612
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
綿引 芳之 東京工業大学, 理学院, 助教 (40212328)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 量子重力 / W代数 / Jordan代数 / THT膨張 / インフレーション / 編み上げ機構 / Coleman機構 / 弦理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,宇宙背景輻射と宇宙加速膨張の観測精度が向上したことで,宇宙定数を仮定する従来のフリードマン方程式が宇宙膨張を正しく記述しないことがわかってきた。ハッブルパラメーターのグラフでは現在のハッブルパラメーター,つまり,ハッブル定数に矛盾が生じることから,これをハッブル定数問題とよばれている。ところが,2021年度の研究で,W演算子による量子重力理論から導かれる修正フリードマン方程式がこの問題を持たないことを発見した。ハッブル定数問題の解決である。
従来のフリードマン方程式では,宇宙定数が宇宙加速膨張を生み出す。一方,W演算子による量子重力理論から導かれる修正フリードマン方程式では,我々の宇宙から分離してすぐに消滅する無数の赤ちゃん宇宙が宇宙加速膨張を生み出す。量子重力理論特有の性質が宇宙加速膨張を引き起こすのである。どちらのフリードマン方程式も宇宙加速膨張を説明するのだが,その振る舞いはわずかに異なる。ところが,そのメカニズムは大きく異なり,宇宙加速膨張の原因が,従来のフリードマン方程式では宇宙定数である真空のエネルギーであるのに対し,修正フリードマン方程式では瞬時に消滅する無数の赤ちゃん宇宙,すなわち,時空のフラクタル構造になっていることがわかった。これは注目に値する事実で,もし修正フリードマン方程式が正しければ,宇宙加速膨張の観測が時空のフラクタル構造の観測と同義になり,我々人類は時空のフラクタル構造を初めて観測することとなり,物理学の歴史上,重要な発見となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2020年度と2021年度は新型コロナの影響で出張ができなかったこと,および,2021年度は当初予定していた研究で思わぬ大きな発見があったことが研究の予定を大きく変えた。出張がままならなかったため,国際会議の出席をオンラインで何度かしたが,初めて出席する宇宙論の会議では自分が専門外であったため,コミュニケーションは難しかった。しかし,自身一人で悶々と考える時間が増え,宇宙の加速膨張について思わぬ大きな発見をすることになった。結果としては,不幸中の幸い,計画以上に進展したと言える状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究では,W演算子による量子重力理論から導かれる修正フリードマン方程式がハッブル問題を持たないことを発見したが,最終年度の2022年度では,2021年度に行われたこの研究を研究会などで大いに宣伝し,多くの専門家と議論することでさらに深い理解を得たいと考えている。
また,今年度は最終年度なので,当初の予定であるコンピューターによる解析を進める予定である。ただし,解析は数学的な構造の理解だけでなく,大きな局面を開くことになった宇宙論にかかわる問題の解析も平行して進めるつもりである。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響で,予定をしていた国際会議の参加,特に,宇宙論という我々にとっては他分野となる国際会議の参加ができなかった。次年度ではオンラインではない海外出張による国際会議の参加をし,新しい人脈の開拓,そして,我々の理論の宣伝と理解,そして,たくさんの議論を行い,今回の研究のまとめと次のステップへの足掛かりを得たいと考えている。
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Research Products
(4 results)