2019 Fiscal Year Research-status Report
ホログラフィー等分配則と非加法的エントロピーに基づく革新的宇宙論モデルの構築
Project/Area Number |
18K03613
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小松 信義 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (20436827)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 加速膨張宇宙 / 宇宙論 / ホログラフィー原理 / エントロピー / 宇宙項 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,標準的な宇宙論モデルを超えた革新的モデルとして,「非加法的エントロピーとホログラフィー等分配則に基づく宇宙論モデル」を構築し,熱・統計力学的な視点から,加速膨張宇宙のメカニズムの解明に資することである。具体的には,以下の項目を達成することを本研究の主な目的とする。 (1)非加法的エントロピーをホログラフィー等分配則に適用した宇宙論モデルを構築し,一様等方宇宙の重力方程式(加速度方程式とフリードマン方程式)を定式化する。 (2)熱力学第二法則を用いて,加速度方程式の駆動項の大きさの評価を試みる。 2019年度(令和元年度)は,昨年度に構築した宇宙論モデルを拡張して,このモデルをΛ(t)CDMモデルと定式上は等価な宇宙論方程式として取り扱い,宇宙の事象の地平面上の熱力学を検討した。特に,本年度は,駆動項の大きさだけではなく,駆動項のタイプについても熱力学的な制約条件を議論するため,フリードマン方程式と加速度方程式にハッブル係数のべき乗で定義される一般化した駆動項を仮定した。 この宇宙論モデルを用いて,地平面上のエントロピー(べケンシュタイン・ホーキングエントロピー)の変化を熱力学第二法則とエントロピー最大化原理の2つの観点から検討した。その結果,本モデルでは,「エントロピー最大化原理による制約条件が,駆動項の大きさとタイプを大幅に制限する」ことが示された。駆動項の大きさとタイプは,一般的には観測データから決定されるが,熱力学的な観点から予め議論できるようにすることは,宇宙論モデルを構築する上でも重要であると考えられる。このように,本年度は,ハッブル係数のべき乗で定義される一般化した駆動項を用いて,その大きさとタイプに関する熱力学的な制約条件を検討し,上記の目的(2)に該当する項目に関して成果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に構築した宇宙論モデルをΛ(t)CDMモデルと定式上は等価なモデルに拡張し,べき乗型の一般化した駆動項を用いて,駆動項の大きさと駆動項のタイプの2つの観点から熱力学的制約条件を検討することができた。本年度の研究成果は,学会発表1回,および国際的な学術論文1編として発表した。なお,学会発表(日本物理学会年次大会2020年3月)については,学会自体は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となったものの,講演は成立という扱いである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に定式化した「べき乗型の駆動項」を粒子生成モデルとして解釈した場合について,不可逆的なエントロピー生成に関する熱力学的制約条件が議論できるかどうか,現在,検討を進めている。さらに,宇宙背景膨張,揺らぎなどの観点から,べき乗型駆動項の宇宙論モデルの特性を検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
2020年3月に発表を予定していた日本物理学会年次大会が,新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となったため,次年度使用額が生じた。次年度である2020年度の請求分と合わせて,研究内容を拡張するために使用する予定である。
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Research Products
(6 results)