2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K03614
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
土屋 麻人 静岡大学, 理学部, 教授 (20294150)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 超弦理論 / 行列模型 / 複素ランジュバン法 / コヒーレント状態法 / Berezin-Toeplitz量子化 / ゲージ重力対応 / 量子情報計量 |
Outline of Annual Research Achievements |
IIB行列模型は超弦理論の非摂動論的定式化を与えると期待されている。この模型においては、時空はアプリオリには存在せず、行列の自由度から創発される。実際、モンテカルロシミュレーションや古典解の解析によって、この模型において3+1次元の膨張する宇宙の出現を示唆されている。超弦理論は重力を含むため、この模型においては曲がった時空が実現されなければならない。したがって、超弦理論の非摂動論的定式化として行列模型を完成させるには、行列によって幾何がどのように記述されるのかを明らかにしなければならない。2019年度はこれを目指した2つの研究を行った。1つ目は、コヒーレント状態法とBerezin-Toeplitz量子化の研究である。前者は行列が与えられたときにその行列が表す多様体とその幾何と与える方法で、後者は多様体が与えられたときにその多様体を表す行列を与える方法である。先行研究では、球面の場合に、これらが逆の関係にあることが示されていた。ここでは一般の多様体の場合にこれらの間の関係を見出すことへの第一歩として、より対称性の低い回転楕円面の場合にも逆の関係が成り立つことを示した。2つ目は、ゲージ重力対応における情報幾何とバルク幾何の関係の研究である。ゲージ重力対応においても空間が創発されるが、ゲージ理論からいかに重力側のバルク幾何が再構成されるかを明らかにすることが課題となっている。この機構を明らかにすることで行列模型における時空の創発への知見が得られると考えられる。ここでは、共形場理論(CFT)とそれに摂動をかけて得られる理論を考え、これら2つの理論の基底状態の間の距離を測る量子情報計量を、バルクにおいてCFTに対応するAdS時空からのバックリアクションで表す公式を発見した。この公式は摂動の種類に依らない普遍的なものであり、バルクの再構成の問題において大きな進展を与えると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題においては、超弦理論の行列模型を完成させるために、この模型において曲がった時空がどのように記述されるかを明らかにすることが目的の一つであり、これについて2019年度は大きな進展が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
次の3つの課題に主に取り組む。(1)2019年度の研究を発展させ、行列模型における曲がった時空の記述の仕方を明らかにし、超弦理論を非摂動論的に定義する行列模型の完成を目指す。(2)IIB行列模型の複素ランジュバン法を用いたシミュレーションを並列計算で行い、宇宙初期の時空の構造の解明を目指す。(3)大きな行列サイズでのIIB行列模型の古典解探索を並列計算で数値的に行い、標準模型のフェルミオンやゲージ群がIIB行列模型の中で実現されるかを探求する。
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