2020 Fiscal Year Research-status Report
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18K03616
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
市來 淨與 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (10534480)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 初期密度揺らぎ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に研究計画に掲げた初期3次元密度揺らぎの再構築の方法として、遠方銀河団を通過してくるCMB光子の偏光の情報を用いる研究に取り掛かった。CMB光子は散乱する自由電子からみた宇宙のCMB温度揺らぎの4重極によって偏光する。従って、多くの遠方銀河団からの偏光を観測することにより、我々の光円錐の内側を含む、宇宙の様々な場所における大スケールの3次元的な揺らぎを推定することが可能となる。 揺らぎの推定を行うためには、揺らぎを生成し、その揺らぎから期待される銀河団でのストークスパラメータを予言し、さらにそのストークスパラメタから逆問題として揺らぎを推定する、というアルゴリズムを実装する必要がある。
現在は上記アルゴリズムを実現する低分解能の計算コードを開発し、様々な銀河団分布や様々な初期密度揺らぎの状態を用いることにより、アルゴリズムに付随する系統的な問題を精査しているところである。特に銀河団の分布の仕方で再構築の精度が大きく変わるような傾向が現在得られている。現状、低分解能の計算結果であるため今後更なる検討が必要ではあるものの、研究目的にある通り揺らぎの分散の推定ではなく、揺らぎの時間進化を直接測ることができることから、これまでのCMB観測から得られている暗黒エネルギーに関する制限を大幅に改善できる可能性を示している。この結果が高分解能の計算においても実現するかを今後調べていく必要がある。初期段階のアイデアと結果は国際研究会において発表を行った他、学内のセミナーでも発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度投稿した学術論文の再投稿が遅れているが、平行して他の研究計画は着実に進捗があり、概ね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
銀河団偏光による密度揺らぎ再構築については、現在行っている高分解能化と計算の高速化を引き続き行っていく。先行研究との比較が難しい問題のため、数値計算アルゴリズムの系統誤差や間違え等に細心の注意をはらいながら進める。
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Causes of Carryover |
学会をはじめ多くの研究会がオンライン化して旅費の支出が小さくなっている。次年度以降出張が可能となった場合の旅費として確保すると共に、オンラインでの業務の能率をあげるための物品費として使用する。
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