2018 Fiscal Year Research-status Report
Resurgence and perturbative/non-perturbative relation in quantum field theories
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18K03627
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤森 俊明 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 助教 (60773398)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 場の量子論 / 非摂動効果 / リサージェンス / バイオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、リサージェンスの概念を用いて量子論の非摂動効果の解明することを大枠での目標とし、特に場の量子論における摂動級数展開と非摂動効果の間の非自明な関係を理解することに焦点を当て研究を行った。リサージェンス理論は、摂動・非摂動間を関連付けるため、これまでの素朴な摂動展開を補完する強力な非摂動的解析手法を与えると期待されている。2018年度は、リサージェンス理論の場の量子論への応用を目指して以下の研究を行った。 1) 超対称を持つチャーン・サイモンズ-物質場結合系のリサージェンス構造 本多正純氏、鎌田翔氏、三角樹弘氏、坂井典佑氏との共同研究では、超対称を持つチャーン・サイモンズ-物質場結合系のリサージェンス構造を解析した。場の量子論への応用という観点からは、まず厳密解析可能な系のリサージェンス構造を確認することが応用への第一歩として重要である。本研究では、超対称チャーンサイモンズ-物質場結合系では、「局所化の方法」によって厳密結果が得られるケースがあることに注目して、トランス級数展開を導出し、非自明なリサージェンス構造を持つことを解明した。 2) 二次元CP^N非線形シグマ模型におけるバイオン解とその非摂動的寄与 鎌田翔氏、三角樹弘氏、新田宗土氏、坂井典佑氏との共同研究では、二次元CP^N非線形シグマ模型におけるバイオン解とその非摂動的寄与を研究した。この研究では、リサージェンス理論において鍵となる「バイオン」と呼ばれる解を導出し、その非摂動的寄与がいわゆるリノーマロンの寄与とよく合致していることを確認した。二次元CP^N非線形シグマ模型は、強い相互作用を記述するQCDのような四次元のゲージ理論の良いトイモデルであるため、それに対するリサージェンスの適用は、QCDへの応用、特にリノーマロン問題の解決の糸口となると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、場の量子論という枠組みの中でリサージェンス理論を適用するという研究計画を達成することができたため、本研究はおおむね順調に進展していると言うことができる。これまでの場の量子論におけるリサージェンス理論の研究では、定性的な議論が主であって、第一原理に基づいた定量的な解析は比較的解析が容易でる量子力学系での議論が多く、場の量子論では行われてこなかった。2018年度の研究では二次元CP^N非線形シグマ模型におけるバイオン解とその非摂動的寄与に関する研究を行ったが、これは初の場の量子理論におけるリサージェンスの定量的な解析であり、これからのさらなる進展への足がかりとして重要な結果である。チャーン・サイモンズ-物質場結合系の研究では非自明なリサージェンス構造を解明することができ、予定以上に研究が順調に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
リサージェンス理論の定量的な研究は、解析が比較的容易な量子力学系(一次元系)のみに限られていたが、2018年度の研究では二次元CP^N非線形シグマ模型におけるバイオン解とその非摂動的寄与に関する研究において、初めての量子理論におけるリサージェンスの定量的な解析を行った。この研究を踏まえて、今後の推進方策として以下の研究を計画している。 1. 2018年度の研究では、いわゆる複素バイオンと呼ばれる鞍点解からの非摂動的寄与が虚部不定性を持つことを確認した。場の理論が期待されている通りのリサージェンス構造を保有していることを示すにはバイオンの虚部不定性が、摂動級数のボレル和のそれと相殺することを示す必要がある。したがって摂動級数展開の高次振る舞いを見ること、特にいわゆるリノーマロンに対応する不定性を定量的に導出することが重要な課題である。一般的にリノーマロンはラージN極限においても存在するため、二次元CP^N非線形シグマ模型のラージN極限を用いることによってリサージェンス構造を研究を進めていく。 2. さらなる目標として、4次元におけるゲージ理論のリサージェンス構造を理解することが挙げられるが、摂動・非摂動双方において議論は定性的なものに限られている。 2018年度の二次元CP^N非線形シグマ模型におけるバイオンの研究およびこれより計画しているラージN極限の研究、格子計算などを応用し、リノーマロン問題を解決すべく4次元におけるゲージ理論のリサージェンス構造の研究を行う。
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Causes of Carryover |
予定していた数値解析用ソフトウェアは別のもので代替可能であったため購入を中止した。2019年度の人件費が今年度と同様に予定より多くなる見込みであるため、2018年度の差額は人件費に充当する予定である。
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