2020 Fiscal Year Research-status Report
Resurgence and perturbative/non-perturbative relation in quantum field theories
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18K03627
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤森 俊明 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 助教 (60773398)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 場の量子論 / 非摂動効果 / リサージェンス / 非線形シグマ模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の研究では、リノーマロン問題とリサージェンス理論の応用の研究を行った。特に(1)リサージェンス理論に関連する非線形シグマ模型における非摂動物理の解析、(2)完全WKB解析を用いたシュウィンガー機構の研究を行った。 (1) 非線形シグマ模型のリサージェンス構造を理解することは、模型の非摂動的性質を明らかにする上で重要である。特にリノーマロン問題が存在しており、その起源を理解することができればリサージェンス構造から非摂動物理を理解することにつながると期待される。 リノーマロン問題など非線形シグマ模型におけるリサージェンス構造と非摂動物理の関係を明らかにすることを念頭にコンパクト化した空間におけるZ_N対称なツイスト境界条件を化したCPN非線形シグマ模型の格子模型の解析を行った。その結果「Z_N対称性の自発的破れ」が起きることがないという「断熱的連続性」の仮設を裏付ける結果を得た。またZ_N対称ツイスト境界条件のもとにおけるエントロピーの類似量である「pseudo-entory」を定義し、その解析結果からも無矛盾な結果が得られた。 (2)完全WKB解析を用いて、時間依存する強電場のもとでの荷電粒子の対生成を議論した。その結果、準古典的な状況のもとでの対生成数が「Stokes segmentに対する接続行列」の積を用いて与えられることを示した。この研究によって完全WKB解析のシュウィンがー機構への応用が、広く一般的な時間依存する電場のもとで可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は概ね計画通りに進展した。(1)「リノーマロン問題」を非線形シグマ模型において議論する一つの方法として、コンパクト化した空間にZ_N対称なツイスト境界条件を課した模型を考え、いわゆる「断熱的連続性」と呼ばれる性質を用いて、弱結合領域における解析を強結合領域までつなげるという手法が提案されている。その一方で「断熱的連続性」、特にZ_N対称性が自発的に破れるという相転移が存在しないことが重要であった。2020年度の研究では、「そのZ_N対称性が破れるという相転移が自発的に起きるか」という問題を格子上でのモンテカルロ・シミュレーションを用いて調べ、その結果、「断熱的連続性」を確認する結果が得られた。この結果は弱結合領域から強結合領域への連続的なつながりを用いた解析が可能であることを示唆し、さらなる進展へとつながると期待される。 (2)完全WKB解析を用いたシュウィンガー機構の研究は、リサージェンス理論の重要な応用の一つであると言うことができる。リサージェンス理論の応用は多岐にわたり、様々な系の非摂動的な性質の理解に役立つと考えられる。本研究ではリサージェンスの応用という観点からも重要な進展であるということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
リノーマロン問題を解くという観点から考えると、これまでの研究結果より「断熱的連続性」の構造の理解が進展してきているため、それを応用して非線形シグマ模型におけるリノーマロンをコンパクト化した時空中でのZ_N対称なツイスト境界条件を課した模型において考えることが、今後の研究の方向性となる。特にラージN極限を利用して、その性質を解析的に解明することによってリノーマロンの素性を明らかにしていく。 またその他の理論においても新しいタイプのリノーマロンに類似した構造が見つかっている。1+1次元の非線形シュレーディンガー系はその一つであり、そのリサージェンス構造と準古典的な複素鞍点解の関係を探ることでリノーマロン問題の理解を進展させていくことが今後の課題となる。
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Causes of Carryover |
2020年度の状況により、学会・研究会などに現地で参加することができなかったため、当初の計画を変更せざるを得なかった。2021年度の計画では研究の進展の発表および研究のための情報収集として学会・研究会に参加するため、旅費として使用する計画である。また必要に応じて研究に用いるコンピュータ・図書などの物品を購入する。
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Research Products
(5 results)