2020 Fiscal Year Research-status Report
Cluster-Gas States and Low-Density Nuclear Matter
Project/Area Number |
18K03629
|
Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
山田 泰一 関東学院大学, 理工学部, 教授 (70200722)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | クラスターガス状態 / アルファ凝縮状態 / アイソスカラーモノポール遷移強度 / テンソル最適化フェルミ球法 / 核物質 / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
強相関系である原子核には、平均場描像では理解できない様々な多粒子相関が現れるが、クラスター状態はその代表例である。最近クラスターガス状態という新しい存在形態が明らかにされ、宇宙における元素合成で重要な役割をしている12Cホイル状態はその典型例である。また、中性子星の表面などの低密度核物質にはアルファ凝縮状態という特異的な状態が出現すると考えられている。本研究計画の目的は①クラスターガス状態の拡がりと深さをp殻およびsd殻領域において追究する、さらに、②第一原理による新しい核物質計算法であるテンソル最適化フェルミ球法(TOFS)の理論を発展させて、無限核物質のエネルギーの収束性問題やこれと密接に関連した短距離相関とテンソル相関の役割など原子核物理学の基本問題を解明することである。 2020年度はコロナ禍などのために研究の進捗状況は遅れ気味であったが、①においては、sd殻の代表例として20Ne核における12C核と2個の4He核(アルファ粒子)からなるクラスターガス状態を理論的に解明することに主眼をおいて研究を進めた。12C核の基底回転帯状態と2個のアルファ粒子運動との結合を考慮に入れた、ガウス関数基底による12C+α+α直交条件模型の定式化とプログラミング、予備的な計算を進めた。高い軌道角運動量を考慮にいれる必要があり数値計算上の困難さに遭遇したが、この問題点を解決し、次年度での本格的計算に道筋をつけることができた。一方、②に関しては、2019年秋にイタリアで開催された国際ワークショップで講演した内容を基にしたTOFS理論についてのレビュー論文(査読付)が国際学術誌に掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度はコロナ禍などにより予定していた研究課題の進捗状況は遅れ気味であった。しかし、12C+α+α直交条件模型による研究を進めて、数値計算の困難さを解決できる目途が立ったこと、さらに2020年度末に学部長職を退任することなどを受けて、本研究計画の延長・継続申請をし、2021年度末までの1年間の継続が認められた。このような状況下でも3本の論文を発表できた:①日仏独中の共同研究であるカルテット波動関数を用いた重い核のアルファ崩壊に関する論文は国際学術誌「Physical Review C」に掲載された(査読付)。②日仏独中の共同研究であるTHSR波動関数を用いた8-11Beの構造分析の論文が国際学術誌「The European Physical Journal A」に掲載された(査読付)。③2019年秋にイタリアで開催された国際ワークショップでの講演を踏まえたTOFS理論についての単著のレビュー論文(査読付)が国際学術誌「The European Physical Journal A」に掲載された。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は本研究計画の最終年度であり、これまでの研究を一層進展させると同時に、既に得られている重要な研究成果をまとめて国際会議などにおける発表と論文の作成及び掲載を目指し、最後に本研究計画の総括を行う。以下に、主として実施する個別テーマの推進方策を示す。 (a) 20Neにおける12C核周りの2αガス状態を調べるため、12C+α+α直交条件模型により、結合状態近似の下で12C+α+αガス状態とモノポール遷移強度の分析を行う。さらに複素回転座標法と組み合わせてモノポール遷移の強度関数の分析なども進める。2021年度中に最初の論文発表を目指す。 (b)上記(a)の進展を踏まえて、5αガス状態を調べるために、5α直交条件模型の予備計算を開始し、次年度に本格的な数値計算を目指す。20Neの高励起ガス状態からのα崩壊など興味深い実験データを理論的に解析する。この問題については、16Oにおける4α計算の経験あるので、これを踏まえてプログラミングと数値計算を行う。 (c) テンソル最適化フェルミ球(TOFS)理論による無限核物質計算について:現実的な核子間相互作用としてテンソル力など非中心力を含むAV6’やAV8’、AV16を用いた核物質計算では核物質のエネルギーが計算法に依存することが知られており、従来の理論計算にはエネルギーの収束性の問題がある。この原子核物理学の基本問題を解明するために、TOFS理論で陽に取り扱うことができる多体相関の役割に焦点をおいて分析を進める。また、この理論による核物質の状態方程式の導出を目指し、中性子星や超新星爆発などの研究領域も視野にいれた研究を進める。
|
Causes of Carryover |
当初参加する予定であった国際会議や国内学会にコロナ禍などの理由により参加ができなかったために、次年度使用額が生じた。これは次年度に進める研究に必要なワークステーションの購入に主に使用する予定である。
|
Remarks |
関東学院大学・理工学部・山田研究室
|
Research Products
(9 results)