2020 Fiscal Year Research-status Report
Effects of fission to isotopic abundances on the r-process synthesis in star
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18K03631
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
小浦 寛之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (50391264)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 原子核崩壊 / β崩壊 / 核分裂 / r過程元素合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、元素の起源の解明のために、爆発的天体現象における速中性子捕獲反応過程(r過程)における、核分裂に関連した理論計算を行う。原子核の性質を主対象として注目し、これまで十分に検討されていなかった、中性子過剰超重核領域における反応過程及び崩壊過程について、特に核分裂を随伴した過程の計算を核図表上の大域的な計算を小浦-橘-宇野-山田(KTUY)原子核質量模型を用いて行い、この領域の原子核崩壊がr過程元素合成にどのように影響するかを調べることを目的とする。 2年目の令和元年度は、前年度に導入したPCの環境の開発を行い、多量計算が概ね行えるように整備した。並行してr過程元素合成計算に必要なβ崩壊計算コードの開発を行った。具体的にはβ崩壊遅発中性子放出割合を1粒子放出から10粒子放出まで(粒子数は今後最終的に調整)系統的に計算できるように、同時にβ崩壊遅延核分裂割合の計算を行えるようにした。崩壊幅計算に必要な準位密度は原子核の励起状態の変形度も考慮する形で導入し、上記の計算コードに組み入れた。 r過程の時間発展計算については、まずは天体環境を設定しない条件で初期値同位体量を仮定して見積もりを行なった。初年度に実施した、崩壊幅を1と極限近似した場合で実施したところ、中性子数N=82,126閉殻付近の中性子過剰側で収量が増え、それぞれの中性子より少し少ない核種で収量が大いに減っている計算結果を確認した。これは本計算に用いたKTUY質量模型の性質を反映しており、定性的には妥当な結果である。3年目の令和2年度は天体環境を考慮した初期値及び環境パラメータを考慮して解析を進め、中性子過剰超重核領域における反応過程及び崩壊過程、特にβ崩壊遅発中性子放出割合及びβ崩壊遅延核分裂割合の系統的計算を行うところであったが、新型コロナの影響で作業が滞り、予定通りの計画が実施できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
3年目の令和2年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、研究計画の大きな変更を迫られた。特に4月、5月の所属機関内研究所への入構制限及びその後の部分的入構制限により、大規模な計算についての準備に遅れが生じて年度内の計算実施に至らなかった。 また、緊急事態宣言の発出等により、年度を通して、関係機関との交流(出張)に多大な制限を受け、研究に必要な議論・情報収集を十分に行うことができなかった。このような事情から補助事業期間延長申請を行い、研究計画の延長を余儀なくされたことから、遅れている。と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる令和3年度は、中性子過剰超重核領域における反応過程及び崩壊過程、特にβ崩壊遅発中性子放出割合及びβ崩壊遅延核分裂割合の系統的計算を行う。 令和2年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けて、特に上半期は、計算の実施が大幅に制限された。令和3年度も新型コロナウイルス感染症の感染状況の影響を受ける(キャンパス内立ち入り制限等)ことが懸念されるが、令和2年度の状況を踏まえた対応を実施していきたい。
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Causes of Carryover |
令和2年度においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けて、予定していた出張が取りやめになったことから次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、令和3年度に実施を予定している計算に係る費用等として使用する。
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